ここでは、英検1級1発合格術にこだわらず「ためになる英語」学習に関して、役立つ本を案内していきます。
37冊目は言語社会学の泰斗(権威と言ってもいいのですが、あえてこの言葉を使います)、鈴木孝夫が1990年に出版した「日本語と外国語」です。
ここでは、言語の違いを越えたところの、感覚や価値観の違いががいくつも紹介されています。
たとえば、イギリスで鈴木孝夫がレンタカーを借りようとし他時の話です。
「オレンジの車が行くから」というので指定された場所で待っていたら、いつまでたっても来ない。目に入ってくるのは、茶色っぽい車。ところが、イギリスでは、これが「Orange」でいわれるところの色なのだと教えられます。
そのほかにも、イギリス人は「絶対に」馬肉を食べないとか、トルコやパキスタンと言った国々では太陽は「忌み嫌う」ものであって、だからこそ「月」が国旗にあしらわれているとか。
あるいは、あの「虹」もアメリカでは6色とか、日本人が虹を見ると「幸先の良さ」を感じるけれども、国や地域によっては「不吉の前兆」とされているところもあるとか。
本ブログ筆者は常々、TOEICや英検のような試験は、どこかで打ち止めにした方がいい、もっと他の角度からの英語学習をしたほうがいい、その方が、ためになると申し上げています。
特に日本人の場合、英語を学べば、どの国ともどの国の人ともとわかりあえる確率が高くなると思う。そんな傾向が非常に強いのではないでしょうか。
しかし、既に述べたような文化的差異に日本人は、見て見ぬ振りをしがち。
英会話の本など、いまだに、その編集方針と言うか本の構成上、外国人を「肌や目や髪の毛などは違うけれど、本質的には日本人と変わらない」といった視点で書かれている。
いや、違うだろう、と言いたくなるのです。
やや偽悪的に言えば、「もともと文化や価値観が違う者同士である」という視点に立ってこそ、「あ、同じところもあるんだな、よかったあ」といったカンドーがあるのではないでしょうか。
ところが、地上波のテレビでよく見られるのは、これとは逆。日本人の価値観をどしんと不動のものにして、「外国人もこんなに生魚を食べてよろこんでいる」とか「着物を着て、良さをわかってくれている」といった、「大本営発表」ばかり。
自分たちに都合のいい部分の観察や解釈ばかり。作る方も見る方もそれで「やっぱりねえ」などと、ご満悦で終わり。といった風ではないでしょう。ほとんどが。
「絶対に」馬肉を食べないから、馬刺しを前にして困惑しているイギリス人とか、「今日はいい天気でしょう」とお日様を指差しているアナウンサーの前で苦い顔をしている砂漠の国の国民は、「絶対に」登場しません。
いや、そういう場面を映せといっているのではないのです。
見せている部分が一部にすぎないのに、あたかもそれが全部のようにおもわせていないですか、思い込んでいませんかと申し上げたいのです。
資格試験では誤訳をしては点数が落ちるので気にする。その一方で、外国を使ってのいわば実務におけるこのような「文化の読み違え」は、ほとんと気にしない。それは、「絶対に」おかしいでしょう。
あの、日本人は家に入るとき靴を脱ぐが、外国人は…といった部分の案内についても、この本を読むといかにオブラートがかかっているかがわかります。そんなに、なまやさしくはないのです。
たとえば、イギリス人は家では「絶対に」靴を脱がないのです。素足を他人に見せることは、恥だと思っている。だから長年のうちに靴の中で足が変形してしまい、その変形治療専門の足医者、podiatristがたくさんいる。
さらに申し上げるなら、英語を使うこと、使えることに日本人が変な特権意識を持ってしまうのも、どうなんでしょうか。
上等なスーツか装飾品のような「持てたらいいなあ」と思い込む。憧れる。人に自慢する。
しかし、本当にそうなのでしょうか。本ブログ筆者はそこも疑ってはどうですかと、問いかけたくなります。
たとえばインド人は公用語として英語を使っている。だから「いいなあ、早期教育しているんだろうなあ」みたいな考え方です。
本当にそうしょうか。
英国に植民地とされた因果で、つまりインド人の立場からすればいわば「仕方なく」「苦々しい思い」で公用語として使っているかもしれない…そのくらいは、想像してもいいのではないでしょうか。フィリピンにおける英語についても同様です。
以上、日本人の無邪気な「人間はみんなおんなじ」信仰や「英語=上級言語」信仰についての疑義をこの本を借りながら、申し述べてみました。
なんだ、せっかく英語を勉強する気になっているのに、めげてしまうではないか、とお思いの方も少なくないかもしれません。
しかし、本ブログ筆者は、あえてそれは日本人にありがちな「甘え」であると見ています。このあたりについては、別の本を借りて述べてみようと考えています。
以上、英語の参考書には載っていないかもしれませんが、あなたの英語学習の参考になればと思い、書き記してみました。