ここでは、英検に限らず、「ためになる英語」術とは何かについて述べてみます。
英語とは「交渉の道具」である。
結論から言えば、英語とは単なる言語ではありません。相手と対等にやり合うための「交渉の道具」なのです。この認識がない限り、どれだけ単語や文法を覚えても、実践の場では簡単に足元をすくわれる。にもかかわらず、日本人にはこの認識が決定的に不足しているのではないでしょうか?
外国人コーチとの30分延長トラブルから見える現実
今から約40年前。日本はバブル経済崩壊の数年前で、「わかもの」の間では、スキーとかテニスが「やって楽しむスポーツ」として人気を博していました。
自分もそのころ、テニスを始めていたところからオーストラリア人コーチ(名選手とかではありません)がマンツーマンレッスンを初めてやるというのを知って申し込んだのでした。確か30分3,000円前払いだったと記憶しています。そのコーチが日本に来てまだ間がないらしく、英語だけしかしゃべれないとも、聞いていました。
外見は映画「Back to the future」シリーズに主演していたマイケル・J・フォックスのように小柄な若い男。とはいえ、あんなにハンサムではありません。人相も、よろしくない。それを事前に調べておかなかったのが、ミスの始まりでした。というのも、このコーチが終了間際になってもレッスンをやめません。「もう少し続けよう」。
料金を払ったレッスンの時間を超えて約30分、二人で球を打ち続けました。後日フロントから、こんな申し出がありました。いわく、「すみません、あの外国人コーチがですね、『レッスン所定の時間30分を30分超過したので、超過料金分として別途3,000円を払ってくれ」と言ってるんですが、いいですか」。呆(あき)れれてしまったものの、すぐにその超過料金分を払いました。
Noと言えない人間が損をする現実
さて、どこに問題があったのでしょうか?
それは、その場で「No」と言えなかった点にあります。つまり、この件の本質は英語力ではなく、契約と時間、そして自分の立場を守る意識の不徹底にほかなりません。こちらは30分のレッスンを購入した。相手はそれを超えてサービスを提供した。本来であれば、その時点で言うべきだった。「30分で終わりだ」あるいは「超過料金がかかるよね?」と。しかし私は、それを言えなかった。言わなかった。
日本社会では、こういう場面で「なあなあ」が通じるからです。時間を多少過ぎても、お互い様。多少の曖昧さは許容する。ああ熱心にやってくれている、などと手前勝手に解釈してしまう。
日本人に染みついた「なあなあ」文化の悪影響
朝起きた時から夜寝るまで、日本人は日常的に空気を読み、波風を立てないことを優先する社会にいる。いやそれがいいとか悪いと言いたいのでありません。このような文化圏に慣れてしまっていると、英語をいくら磨いても使い物、「交渉の道具」にならないのです。
ところが、日本人の多くがTOEICだの英検の勉強こそそれ、こういった「文化の違い」をあまり学ばずにいる傾向が依然と続いてはいないでしょうか。言い換えれば、英語の文法だの作文能力とあわせて
・正確に意思を伝える
・不利益は拒否する
・対等な立場を崩さない
が不可欠なのにこれを学んでいない。その意味で、私の若いころのこの体験は、まさに「おばか」そのものだったとしか言いようがありません。
「ためになる英語」と「だめになる英語」の分岐点
英語を学ぶとは、単語を覚えることでも、発音を磨くことでもない。日本とは異なる文化圏においても、そこに根付いているルールを理解し、自分を守るための技術、No!を言える態勢を身につけることなのです。
空気を読まずに堂々とNo!という勇気なり心構えがなければ、その英語は「だめになる英語」であって「ためになる英語」とはなりえません。
たとえば、
Time’s up. Let’s stop here.
If it costs extra, I’d rather not continue.(時間です。ここまでにしましょう。追加料金がかかるなら続けません)
これがすぐ出てこなければ、
If it goes over, is there an extra charge?(超過したら追加料金ですか?)
あるいは、
Is there an extra charge? If so, let’s stop here.(追加料金有り?なら、やめよう)
でもいいのです。
ただでさえ英語を発することがおっくうなのに、さらにその上をいくような「No!」などとあまりにも難度が高すぎると思われる方も少なくないかもしれません。また、一般的な英会話学校でも、こういったパターンは教えないでしょう。 そんなパターンよりも、外国人に「笑顔で返されるような英語」ということになるのでしょう。せっかく集めた生徒がしり込みするのが目に見えているからです。
しかし、はっきり申し上げますが、それでは結局現場では「使えない結果」になります。冒頭述べた外国人テニスコーチに翻弄された自分のように。
最も現実的な対策は、日本語での会話の中でも「なあなあ」に流さない場面を意識的に作ることです。もちろん、いつもそれでは軋轢(あつれき)を生むでしょう。
そこで、日本語のときでも「空気を読むモード」と「言うべきことは言うモード」を意識して自分で切り替えるようにするのです。それだけでも、行動は変わるし、英語も変わります。
以上、あなたにとって「ためになる英語」術のヒントをお伝えしてみました。これが、私が「おばか」だった経験から得た、最も有効な英語上達の教訓です。
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