おんな城主 直虎・森下佳子インタビュー | 芸術家く〜まん843

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なんという思い切りの良さ!

井伊直虎という女性のことを
プロデューサーから聞いて
面白いなと感じたのは、
その思い切りの良さです。
「ふつうならそれはしない」というような
思い切った策をとり、
それを実行してしまう。
それも、
まだ子どものころからというところに
興味をひかれました。

そのひとつが、
いいなずけが命を狙われ逃亡し、
行方不明になったら出家してしまったこと。
ドラマでは9歳か10歳の設定ですが、
子ども時代のことだったと言われています。
そこに天賦の才を感じたこと、
また子ども時代に
彼女らしさを発揮していることから、
その部分を全面的にふくらませて
子役でじっくりと描いています。

とはいえ年表を見ると
同時代の徳川、武田、織田の部分は
ぎっしり埋まっているのに
井伊家の部分は真っ白でスカスカ。
どうなることかと思いましたが、
井伊家が何かしら関わっていたと考えられる
史実はそれなりに残っています。
そこへいくまでに、
一体彼女は何をしたのかという部分を
考えながら書くという形ですね。
時の権力者の資料が残っているからといって、
そこに書かれたお屋形様の姿は
誰かの創作が入っているわけで、
それなら資料がない、
知っている人がいないのだから、
私が感じる直虎のかっこよさや、
あるいはばかだなと思うことを
書けばいいと思ったのです。

答えは一つではないということ

思い切りの良さと同時に、
直虎らしさを表しているのが
「徳政令」を
しばらく実行させなかったという史実です。
「徳政令」を認めると
井伊家がつぶれるかもしれないとなったとき、
直虎は戦うでもなく受け入れるでもなく、
ある策をとり、
なんとかかんとかやっていく。
そこに彼女らしさがよく出ていて
すごくいいなと思いました。
今、世の中はとかく、
AかBか選択肢は
どちらかしかないというふうに語られ、
追い詰められることが
多くなっている気がします。
でも、AかBかで納得がいかなかったら、
CかDを探せばいい。
彼女にはそういう発想があったのでしょう。

城主として
敵との人間関係や駆け引きも
勝負どころになってきます。
敵といっても
必ずしもあからさまな敵とは限りません。
井伊家にとって主家であるはずの今川家が、
一番、井伊家の人間を殺していくという
不思議な構造になっている。
そのうえ家内にも敵がいて、
これを殺すわけにはいかない。
さらに敵でいながら
敵ではない部分があったり、
あるいは状況が変わって
敵ではなくなるといったことが、
ばたばたと起きるのが戦国時代です。
そんな生々しい駆け引きが必要な状況を
直虎がどう切り抜けていくのかというのも
見どころです。

答えは一つではない。
だから、
みんな粘ろう、考えよう、
頑張ろうといったことをメッセージとして
伝えていきたいと思っています。

柴咲コウさんの輝き

柴咲コウさんの印象は
クールな方というものでした。
また女優であり歌手でもあること、
お料理が上手な方だということも聞いていて、
自分のペースを大事にして
生きている方なのだと想像しています。
そんな柴咲さんが城主という立場で
一国を背負い、
守らなければならないもののために
右往左往してあわてる(笑)。
そんな姿を見てみたいなと思いましたし、
楽しみでもありますね。
ご自身はとても負けん気が強いと
お話しされていました。
たとえ周囲が止めても
「私はいきます」と突き進んでしまうところが
直虎とよく似ているとか。
ありがたい話です。
直虎はともすれば人間臭く
流れすぎるキャラクターなのですが、
柴咲さんが演じることで
「やはりこの人は城主だ」
「その器だ」と引き戻し、
納得させることができる。
そういう魅力を生まれながらに
備えている女性だと思います。

柴咲さんが歌うように
唱えるお経も楽しみです。
キリスト教のゴスペルや
グレゴリオ聖歌のように、
お経もそもそもは
音楽的な要素を持っていると思います。
アジアには
ハーモニアスに
お経を唱える地域もありますし、
柴咲さんが演じられるのなら
歌っていただきたいなと。
エンターテインメントを提供する側として、
既存のものにとらわれることなく、
楽しんでいただくために
できる限りのことはやりたいと思っています。

ふれあいと絆、ピュアな思い

この物語は、
幼少期に一緒に育った幼なじみ3人が
主軸になります。
井伊家の跡取り娘である直虎、
いいなずけで縁戚にあたる直親、
そして井伊家の中では今川寄りで
少し危険な存在だと思われている
家老の息子・政次。
それぞれの立ち位置は異なるけれど、
彼らの根本には
「この時代をなんとか乗り越えて
井伊を守りたい」
という共通する思いがあります。
お互いそのことを口に出したり
誓い合ったりするわけではないけれど、
共通する思いを抱いている。
それが同志ともいえる3人の絆です。
でも、そこに少し色恋とか情がからんでくる。
そんな作りにしたいんです。

直親は太陽、政次は月のような人、
そして直虎は
絶対にピュアな部分を失うことのない
人物として描くことを心がけています。
領主となった直虎が
さまざまな課題や困難にどう立ち向かうのか、
ときには厳しい判断や究極の選択を
迫られることもあります。
そこで直虎の決断を支えるのは、
井伊家とその後継ぎを守りたい、
そして領民を守りたいという
一途な思いなのです。
そんな一点のピュアさ、
意志を貫く強さは
最後までぶれることなく
貫いていきたいと思っています。