とある女の子の話 | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

私にはかつて20代の女の子の部下がいた。
月に2~3日、青い顔して使い物にならない以外は優秀な人材である。
彼女が独身時代は、仕事が跳ねると、食事に連れ回していた。
しかし、連れ回すといっても、仕事が終わってもなかなか帰ろうとしないこともしばしば。
明らかに。 「飯いくか?」 という私の声を待っていた。
しかし、そんな可愛いのは最初の内だけ。
半年も過ぎると 「今日は魚が食べいたです」 と店を指定するようになった。
ちょうど、連れ回すのと、連れ回されるのが半々と言ったところであろうか。

彼氏がいることはいたが、遠距離恋愛で、アフターファイブのデートはままならない。
退屈しのぎに私は丁度良い相手だったのだろう。
ただ、週一程度だが、異性を連れ回すにはチト頻度が高い。
年が離れているとはいえ、男と女、あらぬ噂が立つことを内心懸念していた。
しかし、そんな噂は一向に立つ気配すらない。
それだけ、二人とも色気がないのであるが、理由はそれだけではなかった。
二人は、周囲から親子と思われていたのである。


事実、部下は店の常連から
「お父さんテレビ出てたね」
とかいわれると、
「はーい。 おかげさまで」
とテキトーなことを言う。
一旦、そう思われてしまうと説明は面倒臭い。
そのせいか、私も、
「娘さん ○○で見たよ」
といわれても
「どーも」
とテキトーな返事をする。


特に実害はないと思っていたので、放置していたのだが・・・・甘かった。
丁度、年頃の部下は結婚することに・・・・
その話を聞きつけ、結納の日に特大の鯛が匿名で差し入れられたのである。
差し入れられた先は、結納を交わす料理屋。
何処で調べ上げたのか・・・・粋な計らいであるが、匿名でも送り主は誰かピンとくる。
そんな巨大な鯛を入手できるのは行きつけの店の常連で、魚屋の主しかいない。

あからさまに誰かわかるのに、何も言わずに匿名での差し入れば博多男の粋。
今回は、博多男の粋が裏目に出た。
私は、謝意を述べると同時に実は親子ではない旨を言おうとしたのであるが、


「何もいわんでイイ! 事情があるのは察しとる!」

といって、遮断されただけならイイが、訳あり親子にされてしまった。

一旦、訳あり認定されると、事情について誰も触れてくれない。

かといって、聞かれもしないのに説明するのもチト変だ。

釈明の機会が永遠に失われたことになる。

私は、粋返しの機会を虎視眈々と窺うしかない。

さて、アタリマエだが、彼女が結婚してからは連れ回したり、連れ回されたりする事はなくなった。
そんなある日のこと、顔見知りの常連さんから。
「お孫さん出来たんですね」
と言われた。
「はい、おかげさまで~」
私は、テキトーな返事をした。