政治・行政のデジタル化で一番進んでいると言われて国はどこかご存じでしょうか。それはIT先進国の米国ではなく、欧州でもなく、発展著しい中国でもなく、もちろん日本でもありません。実は、政治・行政のデジタル化(電子政府)で一番成功していると言われているのは、北ヨーロッパのエストニアという国なのです。
 エストニアはロシアとの侵略紛争から独立した国ですが、経済的、行政的に疲弊してしまって一からの出直しだったことで、安くできるデジタル戦略を、国をあげて取り組み、コストパフォーマンスの高い豊かな電子政府、国民サービスを作り出したとのことです。

 デジタルは貧者のためのテクノロジー(プアマンズテクノロジー)と言われることがあります。それは、デジタルはそれまでとはまったく違った材料で、違った手法で、違ったルールで作られていくからです。これまでのことはすべて無し(リセット)にしてゼロからのスタートになるのです。つまり、新しい土俵です。
 なので、これまで経済成長でリードしてきた先進国も、これからの開発途上国も条件は一緒。逆に、すでに出来上がっている国は、すでにその恩恵を受けてしまっているので、それを手放すのに抵抗があり遅れてしまう傾向が出てきます。つまり、現実的には持たざる者の有利が発生し、下剋上が起こりやすくなるのです。

 そしてもう1つの理由がデジタルは安いことです。同じことを、従来の方法でやった場合に比べて百分の一以下になることすら普通です。それは本項の「速い、安い、正確」「ムーアの法則」の項を見てもらえばわかると思います。

 アフリカ各国で無線のインターネットサービスが普及してきているのも、この文脈から理解できますし、中国がここまで急速に発展できているのも、デジタル化と無縁ではないのです。

 振り返って我が日本。国土が狭いこともあり、道路や鉄道はすでに完備されていて、通信網も有線で張り巡らされていて、いたるところに銀行、郵便局、コンビニがあり、通常生活で大きく困ることはありませんでした。すばらしいことだし、ありがたいことだし、先人に感謝しなければなりません。しかし、時代の変化はいやおうなく進み、日本はいまや持ってしまった国になっているということです。裏を返せば、リセットして再スタートすることを嫌い、持たざる国に追い上げられる対象になってしまったということです。
 日本が、デジタル化で世界の周回遅れと言われる原因の1つはこれだと言っていいと思います。

 

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