デジタルビジネスがどうして儲かるのかについては、ムーアの法則が重要だと別項で解説しましたが、実はもう1つメトカーフの法則も重要です。

 メトカーフの法則とは、「ネットワークの価値は、そこに接続している利用者数の二乗(^2)に比例する」というものです。
 ちょっと数学的でむずかしく聞こえますが、ここで肝心なのは「価値が利用者数の二乗」という点です。計算してみましょう。まず、そのネットワーク内の利用者が2人から4人に増えた場合を考えてみると、2人の時の価値は2の二乗で4だったのが、4人に増えた時の価値は4の二乗で16になります。人数は2倍なのに価値は4倍です。さらに人数が8人になった時には8の二乗で64になり、人数は4倍なのに価値は8倍になります。もう少し続けて、人数が100人になった場合はどうでしょう?人数は元の50倍ですが、その価値は100の二乗で10,000になり200倍にもなるのです。つまり、利用者数が増えるに連れて、その価値が爆発的(指数関数的)に増加していくのです。
 
 たとえば日本で人気のあるLINEを例にすると、最初は旧友と二人で始めたのが、お互いに旧友を招待して、さらにその旧友がまた新たな旧友を招待してきて…、いまは数十人規模の立派な同窓生コミュニティができている、なんていうことも少なくないことでしょう。その場合の投稿数の増加や、連絡網としての機能が人数の増加に伴って飛躍的に高まっていくことが実感、または想像できることと思います。これがメトカーフの法則による効果なのです。

 ケータイキャリア各社やネットサービス各社が、利用者数を増やそうと巨額の宣伝広告費を使っているのは、まさにこのためなのです。
 ちなみに、LINEの日本での利用者数は約9,500万人(2023年時点)と言われており、世界レベルではFacebook(フェイスブック)の利用者が30億人(2023年時点)と言われています。メトカーフの法則で計算したその価値は、もはや天文学的な数字になりますが、現実の影響力や企業価値(株式価値)はそれを裏付けていると思います。

 ところで、「六次の隔たり」という言葉をご存知でしょうか。誰でも、友達の友達を6回繰り返すと世界中の誰にでもどんな有名人にでも行きあたる、という考えです。たとえば、一人の人が平均で100人の友達を持っているとすれば、友達の友達を6回繰り返すと100×100×100×100×100×100=1兆(10^12=1,000,000,000,000)になり、地球人口の約80億人を軽く超えるという訳です。これもメトカーフの法則に近い概念だと思います。つまり、多くの人間が知人と通信を行えば、凄いパワーがでるということです。

 FacebookやX(旧名Twitter)などのSNSが今日の驚愕のパワーと価値を持つ背景にもう1つの理由があります。彼らはプラットフォーマーとしてすべての場とツールを無料で提供してくれていますが、視点を変えて見ると、自分たちではコンテンツ(中身)は一切作らず、すべて利用者に働かせることでコンテンツを生成させています。そして、それを見に来る人たちへの広告という形(ビジネスモデル)で売上を作っているのです。実にうまい方法です。
 日本がデジタルで後れをとった理由の1つとして、この利用者を(いい意味で)働かせるという共存共栄の視点が欠けていたのではないかと思います。

 

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