この半世紀くらいの間に、いろいろなものがデジタル化されてきました。代表例をあげると、レコードからCD、TV放送の地デジ書籍の電子書籍化、カメラからデジカメデジタルへなどがあるでしょう。これらが登場したときは、デジタル化に対するアレルギーも含めて、アナログ対デジタルの優劣論争がありましたし、いまでも論争が続いているものもあります。
たとえばレコードとCD。レコード派はアナログであるレコードのほうが低音や高音の伸びがいいとか、暖かい音がすると言い、対するCD派はノイズが少なく音質がいいと言います。電子書籍についても、紙の本のほうが読みやすいし記憶に残るという人は少なくないことでしょう。
これらの論争は、アナログ派 vsデジタル派という自分の流儀と重ねての論争という側面もありなかなか面白いのですが、実はこの論争はあまり本質的ではないと思うのです。
レコードや書籍のような単品としてのデジタル化という観点でみれば、もちろんその優劣は考察に値すると思いますが、デジタルにはさらにその先があるのです。
たとえば音楽はデジタル化されたおかげで、CDの次にはアップル社のiTunesを皮切りにネット配信になり、いまではサブスクリプション(定額サービス)へと進化しています。サブスクリプションでは多くの楽曲を自由に聴くことができますし、あなたの好みをコンピューターがレコメンド(推薦)して再生してくれるサービスも人気です。
車の場合を考えてみましょう。車のEV化は、ガソリンエンジンを電気モーターに変えることだと思っている人も多いでしょうが、それだけでは環境にやさしいことや加速が滑らかなことなどはありますが、機能的には革新的な変化ではないでしょう。革新的変化がやって来るのは自動運転への変化です。自動運転は、車自体の正確な制御は言うに及ばず、周りに人は居ないか、障害物が迫っていないか、信号は青か、雨は降っていないかなど、刻々と変化する周辺環境の情報を各種センサーでデジタル化し入手し続け、それらを計算・判断することで実現されます。
つまり、コンピューターの参加です。デジタル化されることでコンピューターがそれらの情報を処理(検索、計算、判断など)することができるようになり、より高度で賢い(スマートな)サービスが可能になります。この情報処理こそがデジタル化の本命であり、この情報処理によりこれまでに無かった新たなサービスを創出することができます。
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