第2279段 役行者のゆかりの蕎麦
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和4年8月上旬となり
この年の暑さの盛りなれば暑さを逃れ信州へと行き
予てより念願の蕎麦屋の伊那市の「梅庵」へ行き
名物の行者蕎麦と鴨肉の鍬焼を所望し
歌を
ただ単に 蕎麦だけが旅の 目的にて
役行者の ゆかりの蕎麦食ぐ
※「役行者」とは本名を役小角といひ
山伏、つまり修験道の開祖にて、通称名にて役行者とぞ
申す平安時代の人物なり。
その彼がこの木曾駒ケ岳の麓に伝へ広まりたるが
「行者蕎麦」なり。
而して、その蕎麦の特徴は蕎麦汁が大根の絞り汁に
味噌を溶き食するのである。
つまり昔にては高価なる醬油ではなく
身近にある辛味大根とどの家にてもある味噌の組み合はせにて
本来は素朴なる食べ方なり。
而して、「梅庵」にては醬油ベースの蕎麦汁に味噌を添へたるは
現代人の好みに迎合しての技とぞ覚えけり。