新編・伊勢物語 第2107段 意識のあらぬ母上を見舞ひて 星原二郎第2107段 意識のあらぬ母上を見舞ひて 昔、男ありけり。今も男あり。 その男に友あり。 その友、筑紫の国は築上の郡は上毛町の出にて 三河の国は刈谷市に住みけり。 ふるさとに老いたる母ありて高齢となり 老人施設に入りたれど意識のあらぬ状態となり 駆け付けたれば友に成り代はりて さらにまう一首、歌を 意識なき 母を見舞ひて 今生の 終(つひ)の別れと せぐりくるもの と詠みけり。 結句の体言止めは「抑へかねつも」等の 感情表現の省略形なり。