第千五百六十八段 波を子守の唄と聞き
昔、男ありけり。今も男あり。
その男 令和二年六月二十九日
名古屋港を出航し仙台港へと行く
太平洋フェリーに乗船し
今年もみちのくの各地の歌枕、温泉、地酒を
巡る旅へと行きけり。
出航し夜の深まる頃 ビールの酔ひと
ほどよき波に揺れければ、眠気を催し
歌を
懐かしき 母が胎内 思ひ出づ
海原を航く 船に眠らむ
と詠み 漢字にては【海】の中に【母】ゐて
フランス語の【母】には【海】があるとの
某(なにがし)の言葉を思ひ浮かべつつ
波音を子守唄と聞きつつ眠りに落ちけり。