第千四百二十三段 万年筆の万年堂の店主の年齢
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和二年一月下旬の或る日
愛用のパーカーの万年筆が擦れがちとなりき。
されば岡崎にある万年筆の
専門店へと行き修理を依頼す。
然れども寿命にて引退を勧められ思案の末
つひに意を決し新たなる一本を買い求めけり。
雑談の後、店主の年齢を問ひて
歌を
万年筆の 万年堂の 店主いま
九十三歳 現役ばりばり
と詠み 元気矍鑠ぶり驚きつつ
新たなる一本はその店主の年齢に
あやかりたき願ひを募らせけり。