新編・伊勢物語 第千二百九十九段 蝉の生涯 星原二郎第千二百九十九段 蝉の生涯 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、令和元年八月中旬の或る日の朝 あちらこちらにて蝉の亡き骸を見遣りて 歌を 仰向けに 命果てたる 蝉どもよ 短き生涯 悔いはあらざるや と詠みけり。 而して、【短き生涯】とはその男の主観にして かの蝉ども、幼虫にては土の中にて 七年前後を過ごしければ 一概に【短き生涯】とは 言へざるとぞ覚えけり。