第千百五十八段 こけしの語源は子消し
昔、男ありけり。今も男あり。
その男 みちのくは青森への旅の計画を
立てむ為に地図を拡げゐれば
鳴子、遠刈田などのこけし縁の地名が
目に入りて歌を
玄関に 母の買ひ来し みちのくの
鳴子のこけし 置きて久しも
と詠み 亡き母を偲びけり。
また「こけし」とはかって飢饉の折
嬰児を育てること叶はず間引きせし。
その供養とて、人形を作り慈しみしが
始まりとの説を肯ひつつ
その語源の「子消し」に一入
悲しき過去に思ひを馳せけり。