新編・伊勢物語 第千六十二段 烏賊釣り船の漁火 星原二郎第千六十二段 烏賊釣り船の漁火 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年の初冬 石見の国のあなたこなたを 柿本人麻呂歌聖の面影を求めさまよひ 海を望む道の駅にてたそがれと共に 灯る漁火を見遣りて歌を 沖遠く 烏賊釣る船の ともす灯の 美しく見ゆ 冬の日本海 と詠み 吹く風の寒さに震へつつ いつまでも見続けけり。