第七百九十九段 鳳来寺早春
昔、男ありけり。 今も男あり。
その男、平成三十年の早春の頃
奥三河の鳳来寺へと行きけり。
参拝を済ませ湯谷の温泉宿に泊まりけり。
寛ぎて歌を
鳳来寺 開きし利修 仙人も
たどりし道か 細き道ゆく
春されば 寒狭川瀬を 雪どけの
たぎり流るる 水の清しさ
豊川の かみの流れを 堰きとめて
鳳来寺湖を 囲む春山
と 詠みて、二度、三度とお気に入りの
奥三河のいで湯を楽しみにけり。
(註)二首目の「春されば」の「されば」は
「来る」の意の古語なり。