新編・伊勢物語 第七百七十三段 熱海駅前の足湯 星原二郎第七百七十三段 熱海駅前の足湯 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成の或る年 熱海での歌会に 出席せむと赴きけり。 熱海駅に到着し、集合時間に しばしの時の余裕あらば、足湯に足を浸し 歌を 熱海なれ まづ一浴と 駅前の 「家康の湯」に 足を浸すも と詠み 歌会に出詠せしが、師より 「歌は料理と同じで材料が肝要。 たかが足湯の事にして良からず」 と辛口の評を給はりけり。 その男、家康を足下に意味があり、面白し と 思ひしかど、師には逆らへず黙しけり。