新編・伊勢物語 第七百七十段 蓼科厳冬 星原二郎第七百七十段 蓼科厳冬 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年 真冬の蓼科山の温泉へと 行きけり。 露天風呂より、雪 多(さは)に降り積もりたる山々を 見やりて歌を 冬さ中 落葉松深く 眠らせて 木末の雪の 朝日に耀ふ と、詠み 静寂の中で枝より、重みに耐へかね 垂(しづ)り落ちる雪の音を風流なりと聴き入りけり。