新編・伊勢物語 第六百五十四段 木魚殿 (前編) 星原二郎第六百六百五十四段 木魚殿 (前編) 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の秋 刈谷市文化協会所属の 短詩文芸(主に短歌・俳句・川柳等)の会の 年に一冊発行の機関紙『群生』に 題を【木魚殿】といふ連作を載せけり。 其の連作は 禿頭 なほもて叩く 日日にして 幾歳経りぬ わが家の木魚 朝ごとに 頭(づ)を叩かるるが 役目にて 心しあらば 何思ふらむ おん前に 坐して動かぬ 木魚殿 日日の勤めを 続けまします