新編・伊勢物語 第六百十五段 若狭小浜(前半) 星原二郎第六百十五段 若狭小浜(前半) 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の夏の盛り 若狭小浜へと行きけり。 行きて歌を 若狭なる 久須夜ヶ岳より 見おろせば 波静かなる 小浜の入江 めくるめく 真夏日をのがれ 潜(かづ)きゆけば 岩間藻の下 海牛はをり 波と風の 造るを見るは 飽かぬかも 巌と松の 岬巡りて そそり立つ 巌の島の いただきの 狭きに松は 生(お)ひて這ひたり