新編・伊勢物語 第六百十三段 柿田川(前半) 星原二郎第六百十三段 柿田川(前半) 昔、男ありけり。今も男あり。その男、静岡の 柿田川へ湧水を見むと行きけり。 行きて歌を 富士に降る 雪幾年を 経てここに 真清水となり 湧き出づるなり 川の無き 富士の山にて 豊かなる 地下水ここに あふれ湧きゐる もこもこと 砂盛り上げて 湧き出づる 水の力の 妙なる営み 翡翠(かはせみ)は 姿見せねど 棲むといふ この川筋を 守りゆくべし