新編・伊勢物語 第五百七十一段 安曇野の「いわさきちひろ美術館」 星原二郎第五百七十一段 安曇野の「いわさきちひろ美術館」 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年七月の暑さ厳しき中 信州は安曇野へと行きけり。 行きて「いわさきちひろ美術館」を訪ね 童画を心ゆくまで賞でけり。 美術館を出で空を仰ぎ 歌を 安曇野の 夏空に浮く 白き雲 ちひろが天にて 描きしならむ と、詠み 彼女の辞世の言葉と伝はる 「もっと絵が描きたい」を 思ひ浮かべ飽かず眺め続けけり。