第五百四十二段 細川ガラシャ幽閉の地を訪ねて
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十九年五月の下旬
丹後半島へと行きけり。
本能寺の変の後、反逆者の娘との烙印を押され
明智光秀に従はざりし、嫁ぎ先の細川忠興の命令により
幽閉されし味土野を訪ね
歌を
如何ならむ 思ひをいだき ふたとせを
細川ガラシャ ここに過ししや
と詠み 細川ガラシャの辞世の歌の「散りぬべき
時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
を思ひつつ、周りは山ばかりなる寂しきところに
発すべき言葉を失ひ立ち尽くしけり。