新編・伊勢物語 第五百三十四段 雨飾温泉 星原二郎 第五百三十四段 雨飾温泉 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の梅雨入りの頃、信州から越後へ 通づるJR大糸線に沿ひて、旅を続け雨飾温泉へと辿り 着きけり。宿より少し離れたる露天風呂にて 歌を 刻々と 変化激しき 山の空 俄雨降り たちまち晴るる 越の国 雨飾山の 中腹の 山毛欅(ぶな)の林の 真澄のいで湯 と詠み たまたま 浸りゐるはひとりなれば 熊との遭遇に怯えつつも、ゆっくり ゆつたり 日本百名山のひとつの雨飾山に湧く名湯を楽しみけり。