第五百二十段 仙仁温泉 岩の湯にて
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十九年の初夏、信州は中野の里の
仙仁温泉 岩の湯へと行きけり。
行きて歌を
仙仁の湯は 湯こそぬるけれ 洞窟の
奥に籠りて 世を忘れけめ
水底の 岩陰に棲む 山椒魚の
心地ひた知る いで湯の洞窟
原始へと わが魂を ゆかしめて
森の奥処の 仙仁の露天湯
と、詠み 「美味き物 食べたかりければ、銀座へ行くより
仙仁温泉の湯宿へ」とのある進言に肯き、且つ ぬる湯を
堪能し心足ひけり。