新編・伊勢物語 第四百二十九段 馬背塚古墳 星原二郎第四百二十九段 馬背塚古墳 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十九年の冬 信濃の国は伊那谷の 天竜川沿ひにある馬(ま)背(せ)塚(づか)古墳へと行きけり。 古墳時代、多くの馬を産し大和へと送りしとぞいひける。 その長(をさ)の墓とも伝はる馬背塚古墳にて、歌を 伊那谷の 時の流れを さかのぼり 馬背塚古墳 今し入りゆく と、詠み 玄室のありし辺りに立ち 眼を閉じ 完成直後の様子を思ひ浮かべけり。