新編・伊勢物語 第三百九十九段 白浜の湯にて 星原二郎第三百九十九段 白浜の湯にて 昔、男ありけり。今も男ありけり。その男、有馬皇子の面影を尋ね白浜温泉へと行きけり。行きて歌を 行幸の 牟婁(むろ)の湯いまも 崎の湯と 熱く湧き継ぐ 斎き浸らむ 海荒れて 大波あらば 二日目は 湯壷に潮入り 湯浴み叶はず 牟婁の湯の 行宮跡は 定かならず 大きホテルの 立ち並びゐて 椎の葉に 飯盛り捧げし 地の神に 願ひは終(つひ)に とどかざりけり と 詠み 有馬皇子の無念の思ひを胸に抱きつつ白浜の地を去りけり。