第三百三十三段 沓掛城址
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の初秋、豊明市内にある
鎌倉街道沿ひの沓掛城址へと行きけり。
行きて、歌を
沓掛の 古りし桜の 幹見れば
蟷螂の鎌に 蜂掴まりぬ
「ムサシ」とふ 名前持つかは 知らねども
蟷螂の鎌に 蜂は捕はる
必殺の 蜂の一刺し 攻撃は
効を奏さず 踠きにもがく
譬ふれば 一発のみの 爆弾を
逸らせばむなしく 蜂は臀振る
と、詠み 蜂と蟷螂の生死を賭けたまさに死闘の
一部始終をファーブル先生に倣ひ見守りけり。