新編・伊勢物語 第二百八十四段 漂着神 星原二郎第二百八十四段 漂着神 昔、男ありけり。今も男ありけり。 日本は海に囲まれし島国なり。黒潮・親潮など 海流複雑に流れければ、海岸に多くの物、流れ着きけり。 時には物のみならず、人すらも流れ着きけり。 その男、漂ひ流れ着きたるが如くに知立に住み古りたると 思ひ至りて、歌を詠みけり。 漂着(より)神(がみ)に あらねど知立に なほ住みて 心はここに あらずなりけり この歌を詠みし後、流離の思ひいや増しにけり。