新編・伊勢物語 第二百十二段 秋山郷の平家落人蛍 星原二郎第二百十二段 秋山郷の平家落人蛍 昔、男ありけり。 今も男あり。 その男、信州の山深きある平家落人伝説の里の秋山郷へと行きけり。 その里、毎年初夏、平家落人の霊魂 平家蛍となりて蘇り 乱舞せむといふを聞きて 歌を この里に 平家落人 伝説は いまだ生き継ぎ 蛍飛び交ふ と 詠み 怨念の火を 夜空に漂はし続けゐる 亡霊共を哀れと思ひ供養の経を唱へけり。