第百九十七段 名剣温泉
昔、男ありけり。 今も男あり。
その男、平成二十八年の初夏、越中富山の
黒部へと行き、名剣温泉に宿を取りけり。
して、夕餉の岩魚づくしにいたく感激し
歌を。
黒部川 激しき流れに 育ちたる
顔荒々しき 岩魚を食ぶ
黒部川に 先ほどまでは 泳ぎゐし
岩魚骨酒 待ちかねて飲む
と 詠み 食し飲み足らひけり。
更に酔ひの余興に、
通り抜け来し宇奈月温泉の地名の由来を歌に
仏像を 川原に見つけ 《うなづき》が
宇奈月の謂と いふはまことか
と 詠み 作の出来に独り《うなづき》笑ひけり。