第百七十段 石と岩と巌 鳥羽の石神様(前半)
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十八年の桜の花の咲き麗しき頃
伊勢の国は鳥羽の相差へと行きけり。
行きて歌を
をみならの 一代に一度 ひたすらの
願ひ聞き来し 相差の石神
伊勢の国 鳥羽の海女らに 昔より
うやまひ篤き 相差の石神
鳥羽の海女 幾代に亘り 伝へ来し
鮫除け呪ひ 「ドウマン・セイマン」
いにしへに 何のありしかは わかたねど
海女の願ひを 聞き来し石神
祠あり 注連縄ありて この岩は
奇しき力 宿し坐します