私は礼儀作法はどこでも守れるようにする、ということは理論的に知っているし、最低限守れるようにはするが、
何か突発的なアクシデントが起きたときの礼儀作法を知らない。とにかく形の上の礼儀だけ強迫的に叩き込んでそれ以外のことをすることを怖れる。
礼儀作法もルールに外れないか、と不安に恐れおののきながらやっているものである。
つまり根っこは自分のことしか視界に入っていない傲慢不遜な人間である。
なので酒が入ると吐くか地がでて不躾な行為をやらかしてそのままご退場、となる。
だから宴席で酒は飲んではならない。自分を守るために。
酔ったらガチガチにした礼儀のアーマーが吹っ飛ぶし、意味不明な演説はするし、
やってくる酒の入った人の上手な躱し方も知らないのでだいたい悲惨な結果になる。
フォーマルな場で規則を杓子定規に守るのはそうしないと守っている気になれないからであり、
何ならマナーのなっていない人を風紀委員のごとく警告したりフロアスタッフに密告でもするだろう。
みっちりと外見や教養、服装や儀礼的な挨拶などを頭の中で綿密に組み立てても、本当の内面、
さりげない所作、予定変更時や緊急時のことは身に付いていないからそのまま傲慢不遜な人間になる。
私にはルールを杓子定規に厳守するよりも柔軟に動く方がつらい。ルールとかマナーって何かで守られている気がするじゃないですか。
ルールとマナーがなければ武器と鎧を外して危険な場所を歩いているようなものである。
ただ自分の武装ってどこかに一瞬で全部吹っ飛ぶスイッチが仕込まれているんですよね。
俗に「空気が読めない」とか「臨機応変に対応できない」とか「何考えてるか分からない」とか呼ばれる一押しで起動するスイッチが。
そんなもの果たして武装なんて大それた名前をつけられる代物なのか。
ええ、何かの集まりの時には頭の中には集まりの正しい手順と順番と挨拶のテンプレートしか入っていません。
それ以外のことを突かれると頭の中に詰め込んだものも含めて全部台無しになります。
なので冠婚葬祭にはめったに出ないが、出てもやって来て世間話もろくにしないままそのまま帰ることもあります。
もうモブキャラ扱いでただ居るだけの存在になって早くこの集まり終わらないかしら、とだいたい思っている。
誰がいるとか人付き合いを増やすとか人と何を話すとかは頭にない。ただ儀礼をすんなり流すことしか考えてない。
そうしてもまずボロが出るが、そうしていないときの惨状の比ではない。
何かのきっかけで間違って弾けると、招かれざる客とか身内の恥とか呼ばれるようになるのです。
誠に遺憾である。