私が住んでいる場所は寒冷地と呼ばれる場所なのでこの時期から明確に大半の植物の育ちが悪くなる。
もうすぐ秋の彼岸である。暑さ寒さも彼岸まで、と言われるように、これから一雨ごとに寒くなり、いずれ雪が降り、最終的に畑は雪に埋まる。
伸びない、実が熟しない、何か勝手に枯れる、なんて日課のようなものである。
寒冷地と呼ばれても夏野菜とか、時折南の方で植えられるような植物を植えてみたくなるが結果は散々である。
オクラはとても小さい。三本植えたが実際もう一つしか残っていない。
昨年はうりずん豆の苗を植えてみたが、散々ツルを伸ばしたあげく花がすぐに枯れるので収量はゼロ、本当に終了である。
調子に乗ってひよこ豆も今年植えてみたが、まず発芽するまでが関門であり、
試しにダイソーのひよこ豆の種を一袋植えて発芽したのは二桁にはるかに届かず、
収量は二つ、すぐに葉が虫に食われて話にならない。どこからこんなに虫を呼び寄せるのか。まさに終了である。
種から育てた空心菜は思ったより伸びず、再生力の高さは存分に発揮したものの、ネキリムシの被害に遭うので、
途中でスーパーで買った空心菜の茎と、育てている空心菜の茎を適当に地面に刺して数を増やした。
ちゃんと全部きちっと育ったが、思ったよりぼうぼうにはなってない。
何というかこう、悪夢みたいな伸び具合を堪能したかったが、ここではまだ研究の余地があるみたいである。
どちらかと言えば唐辛子を密植したが全部ちゃんと育ちました、の方がある意味衝撃である。
なんか勝手に縄張り争いとか葉を伸ばす場所でグダグダになって実になるのを抑えようとしたが、
何もなくごく普通に育ちました。全部実がなりました。風に吹かれても束なのでびくともしません。当然唐辛子の実の方も束です。密です。
正直そんなに食えねぇ、と呟きながら一週間に二桁程度の唐辛子を収穫します。
そして乾燥機にかけて乾燥させます。なかなか簡単に湿度が下がらないので。
それに天気が怪しく日干しで中途半端に乾かして不完全なら保存も怪しいので、それなら徹底的にやってしまえ、ということである。
なお昨年植えて収穫した唐辛子は冷凍庫に入っているので増える一方である。こちらがレシピの考案、米の虫除け、などなど用途を考えても余る。
誰かに渡したいが渡す人もそんなにいないし、膨大な量の唐辛子なんて、突然渡されて一体どうするのかと途方に暮れる人の方がきっと多いので、
何とかしたいがどうしようもない。
収量は多すぎて終了である。数年分の唐辛子は収穫したのではないか。
けれど唐辛子の成長する姿というのは、私の中ではもっとも美しい部類に入っているので、止めるわけにはいかない。
そこまで無闇に伸びるわけでもなく、背も手が届かない範囲には伸びず、時折無謀に伸びるが適宜支柱を立てれば何とかなる。
出来る真っ赤な実の割に白い花とか見た目だけで「私は花です」などと言わない感じで自己主張が強すぎないからいい。
受粉しにくる虫の姿も眺められるし、なんなら蛙までやってきては、茎や葉や青い実のどこかに張り付いて佇んでいる。
次に美しいのは葱であるが、普通の長ネギではなく細ネギと球根から生えてくる類のネギ、俗に言う浅葱とか分葱とかいう方である。
分けつしながら伸びていく、増えていく姿が見えるのは実に美しい。
あまりにも美しいから近くの浅葱が埋まっている野原を保有している人に許可をいただいて少し貰って埋めてきた。
何故か近くのホームセンターには分葱の球根は売られていても浅葱の球根は見えないからである。
横にはニンニクとかラッキョウが普通に売っているのに何故浅葱だけ見当たらないのか。昨日も見に行ったがニンニクの品種が増えただけだった。
気候的にも浅葱が寒冷地とかいう過酷な場所には適しているというのに。
そして水やりやら間引きやら日当たりの調節など本当に野生のまま、何もしなくてもその辺にずっと毎年生えてくるということは、
暑さや寒さに関係なくずっと埋まっていた、生き延びることができるということである。
店で買うものより確実に寒冷地の気候に適応しているではないか。
地物、ではないけれど無理のない範囲で気候に合わせるとするならば地元、同じ気候で生える物をなるべく利用するしかない。
趣味が自分で植えた植物の種や球根を保管して来年植えて育ててまた種や球根を取ることである。毎年毎年、それの繰り返しなので、
一年ちゃんとなるが来年同じ事には確実にならないF1品種の種や苗はあまり使いたくない。
毎年確実にこの形を再現できる苗の種でなければ安心して育てられない。
その辺の更地にずっと何年も同じ形で生えてくる植物が来年突然変異を起こす確率は低いから、
本当なら見える範囲で取れる種を取る方がいいが人の物を盗むのは泥棒である。たとえ人の気配のない更地であっても。
でもミントとかドクダミは取りたくない。後のことを考えたら背筋が凍る。寒冷地だけに。
誠に遺憾である。