シュレディンガーの飛行機の中のペット | 隠者の庵

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自閉症スペクトラム(広汎性発達障碍)当事者が気ままに壁打ちで文章を書き連ねます。
あと趣味についても適当に書き連ねます。何故か見た夢も記述します。

論語に曰く、

『厩が焼けて、先生(孔子)が朝廷から下がってくると「人に怪我はなかったか」と言われた。馬のことは問われなかった。』


先日衝突された旅客機から人は全員脱出して怪我人は出たけれども、旅客機側に死人は出なかった。

そこまではよかったが、急に旅客機の中のペットまで救わなければダメだ、会社の倫理はどうなっているのかと言い出すのが現れはじめた。

あれだけ燃料が燃えているのに、人が自分の意思で脱出するのが精一杯なのに何をどうしろと。

飛行機に乗れば離陸する時に「避難の手引き」みたいな案内をいつもされる。いつも、と言うことはいつでも万が一のことがある、ということである。

『メーデー』とか見ていれば航空機事故の悲惨さ、脱出時に他の事に構っていられないなんて千も承知という状況なんてのはご存知だと思う。

もはや不可抗力で身体だけ持って脱出するのである。手持ちの荷物は避難時には持って行かないでください、と毎回毎回釘を刺される。

航空機の燃料がどのように漏れて、今燃えているところから引火し爆発するというのに、荷物も諦めなければならないほどの緊急事態なのに、

ペットを助けろとかそんなに救助隊を死に至らせたいのか、

今まさに燃えているビルから出てきた人が「中に犬が居るんです」と言われてもどうしようもないのと同じである。

助けに行けば自分が死ぬような場所で迂闊に動けば本当に死ぬ。それでなくても消化作業中に焼死したり一酸化炭素中毒などで殉職する消防士は出る。

もともと身を危険に晒さなければいけない仕事ではあるけれども死ぬような可能性を増やすだけの救助活動なんてギャンブルか博打か何かである。

無闇に人材を失えばそこの仕事は人命を軽視する所だから行かない、あるいは後継者が、後から志願して入ってくる人もいなくなる。

ペットが重要なのは飼育経験をした人なら大体理解しているが、ペットロスが怖いから何が何でも助けろというのも人間にとっては非道な話である。

危険に身を晒す人の安全性、倫理観、人間性を捨てれば当然生命に危険が及ぶ。人間は畑から生えてくるものではありません。

ましてや特殊な技能を持った人間なんてそう簡単に育成出来ません。

馬を育てる人が生き残れば欠けた人員を補充して指導、育成ができるけれども、馬を助けたばかりに育成する人がいなくなれば、

馬など自然に還るしかなく、一から技術を学ぶにも時間がかかってしまう。

緊急事態のような必ず何かが失われる場面で全部助けられるなんて都合のいい話はほとんどないだろう。

トロッコ問題とかに取り組めば何をしても助からないものが出るなんてのは簡単に想定できる。

今回の事故でもすでに航空機は燃え尽きている。人を選ぶか積荷を選ぶか、とすればどうしても人命を選ぶしかなくなってしまう。

しかし人なんてのは食卓に残酷に生命を皿に乗せてお出しするような生き物である。

それでも良識を持っていれば緊急時には迅速に避難できる。この期に及んで火事場泥棒をする奴の生命なんて保証できないが。

いずれ動物が言語を理解して、食物連鎖から抜け出して行動できるようになればいずれ動物も救助されるだろう。しかし今はまだその時ではない。

その時がまだ来ていないからこそやむを得ず諦めなければならないのである。

誠に遺憾である。