暑い日が続くので涼を求めて山越え。お盆過ぎで、少しは混雑も終息したのではないかと思って、水浴びでもしようと思った。
田畑は秋の気配。コスモスが咲き、稲穂の実りも間近だった。
この辺は鎌倉幕府を作った源頼朝の行った最大規模の狩猟イベント「富士の巻狩り」の際に野営地が置かれた場所らしい。
このイベントに乗じて仇討を画策したのが、後の執権となる北条氏と曽我兄弟。侍の歴史上でもっとも有名な赤穂浪士の忠臣蔵と並ぶ有名な仇討である。
これを美談だとする考え方もあるようだけれど、元々は一族内の相続や所領争い。仁義や道徳の欠落した時代と人間たちの所業なのであまり価値は感じない。
日蓮宗の寺院があり、傍を清流が流れている。それを利用してワサビなども栽培しているようだったけれど、クレソンも自生していた。
満開のクレソンの花にはキタテハがたくさん。葉の香りも良いけれど、花の蜜も美味しいのだろう。
近くにはハナトラノオも咲いていた。
自然が保たれて山の幸が豊富にある素晴らしい環境。
清流沿いには百日紅が満開。
普段ならペットボトルの飲料でも買ってしまうところだけれど、せっかくなので飲み物の代わりにトマトとキュウリを購入し、食べながら歩いた。
清流をさかのぼるとこの川の水源地に出る。小さな泉である。
和泉の腋出している様子を見ているとオニヤンマが現れた。都会ではほとんど見なくなったので、とても嬉しい。しばらく見ていると複数が現れたので、集団見合いだったのだろう。
指をさし伸ばすと近寄って来たけれど、とまることはなく、そのままカップルを探して飛び去って行った。
色付き始めた稲穂の上をたくさんの赤とんぼも飛び交っていた。
田んぼの畦道にはあでやかなエゾミソハギ。
水源地のエリアにあるのが、水浴びをする予定だった滝。
夏は子供や家族連れで大混雑のはずだけれど、時間も早いせいか、滝壺にそれほど人はいない。
意外に空いているなあと思いながら滝壺に入ったら納得。あまりの冷たさに1分も入ってはいられない。
足だけでも麻痺して痛くなるくらいの温度だった。
水辺に来ると必ず水中を撮影しているけれど、冷たくてすぐに水から出てしまった。こんなに冷たいし、人も歩いているから魚などはいないだろうと思っていたけれど、後から動画をよく見たらマスやヤマメが足元にいたらしかった。この画像内にも3尾以上いる。
寒いので水から上がると、なぜか足元に白い蝶々がずっとまとわりついて来て、周囲の子供たちに笑われた。パンツの模様が花に見えたのかもしれないけれど、可愛いのでウェルカム。
伝承では源頼朝たちが夜営していた時に滝から太鼓をたたくような音がしたので家来に原因を探させると、滝壺から円筒状の太鼓のような石が出て来たらしい。それは溶岩が倒木を包んだままで石化したもので、お寺の境内に「太鼓石」として展示してあった。
帰ろうと思って駐車場に戻ると、滝の入口に参道らしきものを発見。登ってみると大東亜戦争の戦没者慰霊碑だった。
滝と清流を求める人たちは全く関心がないらしく、誰も来ない。
墓碑類を観察すると、ほとんどが階級の低い兵士で、地元から出征された方々であることがわかる。源頼朝の巻き狩りよりもこちらの方がよほど重い歴史だと思う。折角のご縁なのでご挨拶。
近くにある高評価のお蕎麦屋さんでランチをする予定が、1時過ぎに行ったら、全部売り切れ。混む時間帯を避けて滝を優先したのが失敗だと一瞬思ったけれど、ランチを先にしたら、逆に滝は混み始めていたはずなので仕方がない。
実際に帰る時には大勢の家族連れが集まり始めていた。
ならばと言うことで、近くにある湖のレストハウスを目指すと、そこも臨時休業。
仕方がないので、近くにある大規模観光地エリアに行くことにした。
ようやくありついたざる蕎麦とニジマスの塩焼き。しかし、静岡県の習慣らしいおでん出汁を使ったそば汁は個人的に合わない。やはり江戸風のキリっとショッパイ醬油味が良いなあ。特に暑くて汗をかいたときにはなおさらだ。
食事をしたらすでに日が傾いていたけれど、せっかくなので名物の滝も拝見することにする。脇の清流を下ると大瀑布になっている。
こちらの滝は超有名でスケールも大きい。
大きいけれど、最近はどこも滝壺に入れないので全く面白くない。マナーや事故のせいなのか?そんなのは教育と自己責任の問題のはずであるけれど、その観点を忘れると居心地が悪くなるだけ。最近の行政や世論は過保護な綺麗ごとが流行していることが非常に気持ち悪い。
普段は水しぶきに虹が見られたりするけれど、日が陰って来たので期待できず、早めに退散。
しかし、この領域の空気と温度は地上とは全く異なる。天然のエアコンになっている。とても気持ちがいい。
この日の富士山は朝からずっと雲の中。低地は晴れていたけれど、富士山の周辺にはずっと霧と雲がたちこめていた。
山を越えて反対側に出たところで、ようやく初秋の富士山の頭が見えた。
これからは紅葉の季節。楽しみだ。