台湾の布袋劇 | 雲水・ISAのブログ

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日本は神の国
仁術師

クライアントが横浜に開いた新事務所を訪問し、一緒にランチをご馳走になりました。なかなか入居できない一等地です。これから楽しみ。

 

 

よく来る場所ですが、上から見る景色は新鮮です。YOKOHAMAは海と建造物のバランスがちょうどいい気がします。

 

 

見ていても適当に広くて楽しい。そして変化に富んでいる。国際港、商業施設、美術館、博物館、山手の洋館、中華街などが点在しています。そう言えば、先日の文化村の舞台の仕事でご一緒した方が中華街で「台湾布袋劇」なるものを上演していることを思い出しました。お店に連絡してみると夕方の最終公演なら間に合うとのこと。席を予約してもらい、時間を調整して行くことにしました。事務所のクライアントの皆様も誘いましたが、遠方へ移動のため、私だけでうかがいます。

 

 

会場は私も時々使う中国茶専門店。しかし、布袋劇は一度もお目にかかったことがありません。壁際の坐り心地の良い席を予約していただいたようですが、舞台からはかなり距離がありました。画像の一番奥にある赤い台が舞台のはずです。

 

 

布袋劇とはウィキペディアによれば、その起源は17世紀中国福建省泉州或いは漳州に遡ることができ、現在は台湾に伝承されている民間芸能だそうです。私も仕事でご一緒した時に、簡単な説明を聞いてはいましたが、間近で見るのは初めてです。手袋状の操り人形を手にはめて動かします。

 

 

中国茶をいただきながら待っていると、挨拶の口上から始まりました。独特の言い回しは彼が京劇を学んだ中国人の先生の物真似をアレンジしたものだそうです。中国標準語、台湾語(眠南語)、日本語のちゃんぽんです。

 

 

獅子舞は何となく出来そうですが、皿回しはかなり難しそうでした。最前列の親子が食い入るように見つめています。なかなかうまくいかなかったのは、観客を焦らす意味があったようです。

 


その後にはカンフーアクションもありました。チャカチャンチャンチャンチャンという銅鑼などの楽器に合わせて武者たちが剣と三つ又の鉾で戦います。京劇でもこの音が聞こえると、派手な立ち回りの合図ですから、子供たちは大喜びです。

 

 

いわゆる日本のチャンバラアクションですが、これは双方の呼吸がポイントです。その点、同じ人間が左右の手で操作するので呼吸合わせは見事です。こういう動きは見ないとわかりませんので、動画を編集してみました。

 

 

 

後ろで人形を操っていたのが芸名・チャンチンホイさんです。中国関連の業界で言うと、私の少し後輩になります。ご本人も個性的な京劇俳優さんです。いつも声を出しているのでとても響く舞台映えのする声をしています。

 

 

中国語をビジネスのために勉強する人は少なくなりませんが、その文化にどっぷりと浸かって、あちらの伝統文化を継承する人は圧倒的少数です。その意味でもとても貴重な人材です。彼の舞台を拝見することができてとても光栄でした。感謝。

 

 

人形劇の舞台は組み立て式で、持ち運びが可能です。テレビや映画の無かった時代はこのような人形劇や紙芝居などが手近な娯楽だったのです。

 

ちなみに最近は伝統的な布袋劇が進化していて、人形もイケメンやアニメキャラも登場するようです。顔つきや衣装もアニメに近いデザインです。チャンチンホイさんのような伝統的なタイプは構造も簡単ですが、この規模になると可動部分も増えますので、仕組みも複雑になり、複数の人が共同で操作するようになります。ここまで発達すると「布袋」のレベルを超えていると感じます。布袋は元々、手にはめることができる程度の手袋状の人形を意味していたはずなのです。

 

 

発展タイプは日本の人形浄瑠璃に近くなっています。昭和時代、日本のテレビに登場した名人形劇「南総里見八犬伝」の人形がそうです。構造が複雑になるに伴い、三人で操作します。実物と同じ衣装(生地)を着せて、装飾品も細かい。目や口も動くので表情が豊かになりました。千葉に記念館がありますが、昭和にNHKで放映されたフィルムは部分的にしか残っていないそうで、非常に残念。今でも見たい人形劇です。

 

 

ついでに、先日、仕事先の事務所でとても貴重な京劇の書籍を拝見しました。日本で発行された最初の京劇の専門書だと言われています。

 

 

出版年代は大正14年でした。当時の日中の名優たちの貴重な白黒写真も掲載されています。Chinaの音訳である「支那」を使っていたことがわかります。

 

 

当時のプログラムも付録で付いていました。