「カルメル修道会に入ろうとした少女の夢」はマックス・エルンストのコラージュ・ロマン三部作の第二作目にあたる。
本書は、第一作の「百頭女」にくらべると、かなり読みやすい内容となっている。
というのも、「カルメル修道会に入ろうとした少女の夢」というタイトル通り、ある少女を主人公としたストーリーが語られているからだ。読者は、普通の物語を読むようにこのコラージュ・ロマンを愉しむことが出来る。
「百頭女」では、ストーリーが混沌としていて、読者が想像力によってストーリーを生み出していくような読書が要求されたが、こちらは、コラージュを見て、そこにつけられたキャプションを読めば、すんなり物語世界に入っていけるようになっている。そのため、「百頭女」にくらべて、コラージュにつけられたキャプションが物語の記述や会話等の要素が多く、かなり長めなっている。その内容も、ブラック・ユーモアあり、宗教への悪意や冒涜あり、時にエロティックな要素も見られる。
三部作のなかではいちばんわかりやすく、楽しめる内容になっていて、最初に読むなら「百頭女」よりもこちらの方がいいかもしれない。
とはいえ、物語のシュールさと過激さは「百頭女」にいささかも劣ってはいない。読者は、ここでもシュールで謎に満ちた物語に遭遇するだろう。
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カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢 (河出文庫)
カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢 (1977年)