まりの・るうにい「月街星物園」 | 銀のマント

まりの・るうにい「月街星物園」



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 まりの・るうにいという、不思議な名前のイラストレーターは、「タルホフラグメント」など、稲垣足穂の本のイラストで知られるイラストレーターである。「土星の手品」「キネマの月」「お月様の対話」「黄昏色の方向」などといった作品のタイトルを見ただけでも、稲垣足穂の影響は感じられるが、本書のあとがきによれば、足穂の「宇宙論入門」を読んで感激して二百枚に及ぶパステル画を制作したのだそうである。いわば筋金入りのタルホマニアなのである。
 「月街星物園」には、カラー、モノクロのパステル画とともに文章も収められていて、どのページもタルホの気配が濃厚である。
 稲垣足穂には、野中ユリや中村宏といった一流の画家とのコラボレイション的な著作があるが、まりのるうにいの場合は、それらの画家とはちがって、足穂宇宙にどっぷりとつかって作品を描いている。いわば、コメットタルホの尻尾を絵筆にして、夜空に描いたパステル画といった趣なのである。そこには足穂への愛が溢れている。  



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               まりの・るうにい「月街星物園」昭和54年 北宋社