■夢日記「テント芝居」
初めて憧れの状況劇場の芝居を見に行く。
状況劇場というのは、劇作家で芥川賞作家の唐十郎が主宰する劇団だ。
ぼくは東京に出るまえから、状況劇場の芝居が見たかった。
だがイザとなってみると、チケットがなかなか手にはいらないのと、テント芝居という特殊な上演が敷居が高くてなかなかみられなかった。
なにしろ、機動隊に取り囲まれても芝居を続けたとか、役者が観客と殴りあいのケンカをしょっ中しているとか、初期の頃はそんな様子だったらしいので。
場所は池袋南口のガード近くの空き地。
「蛇姫様 わが心の奈蛇」という芝居だ。※
大きな赤いテントの中は、三百人ちかい観客がシートを敷いた地面に座らされている。
ぎゅうぎゅうで身動きもできない。
芝居が始まると、たちまちその世界に引き込まれた。
地面の上にずっと座りっぱなしで、足も痛いのだが、舞台を見ているとそんなことも忘れてしまう。
主演の根津甚八が若く、活き活きとしていてなんとも魅力的。
根津甚八と李礼仙の恋とさすらいの物語だ。
始まって1時間くらいたった頃、悪役の唐十郎が木の箱の中から生きた蛇を取り出した。
それをぶんぶん振り回したあと、観客の中に投げ込んだ。
観客は逃げ惑い、パニック状態になる。
もはや芝居どころではない。
テントの中から観客がいなくなり、
芝居はそのまま中止になってしまう。
「虚構のわからねえ観客だ」
と、唐十郎が怒っている。
だが、あれはいくらなんでもやりすぎだと思う。
初めて見た状況劇場の芝居が、途中で中止になってしまったことにがっかりし、帰りの電車に乗る。
電車が走りはじめたら、悲鳴が起こった。
近くの乗客が恐怖の顔でぼくの足元を指差している。
見ると足首に蛇が巻きついていた。
※3年前、エグザイルのメンバーが主演で同じ題の芝居が上演されたが、これはその状況劇場版。