アドラー心理学という言葉をよく目にするようになって久しいですが、いったいどういうものかわからなかったので、Audibleで本書を聴いてみました。
私は、実際の仕事で厳密に行っているわけではありませんが、大きく分けるとフロイト派に属する心理カウンセラーです。フロイトと袂を分かった精神科医やカウンセラーは大勢いますが、アドラーは大学で学ぶ機会がなかったので興味がありました。
そして聴き終わり…。釈然としません。
これはアドラーのせいではなく著者の岸見さんの問題ですが、フロイト理論への理解が浅く、反論されるたびに不全感を感じました。
「過去や未来にとらわれることなく、今を真剣に生きることが大切。」
本書のクライマックスで語られるこの言葉は、アドラーの言葉としてではなく、彼の影響を受けたカール・ロジャースによって世界中に広がり、今、多くの心理カウンセリングがこの考えに基づいておこなれています。そういう意味では、アドラーの考えは世界に浸透したと言えるかもしれません。
ただ、「今の辛い状況は何か目的があってあなたが作り出している」とする「目的論」の部分はなかなか納得できるものではなく、実際につらい状況にある方たちにとっては救いのない理論です。「そのつらい状況は何かを象徴している」としてその意味を一緒に考える精神分析のあり方の方が、やはり私にはしっくりきます。
タイトルに「自己啓発の源流」とあるように、本書は、精神的な健康度が高く承認欲求が強い人が読むと、カルチャーショックを受け、その後この考えに傾倒していくのでしょう。最終盤に青年が哲人に向かって「私は先生を信じます!」と言うことでも、それが現れています。
うーん、もう少しフラットなアドラー心理学の本を読み直した方がいいのか…。もういっか、という気になっているのも事実です。
同じ「誰もあなたのことなんか見ていない。気にせずやりたいことをやりなさい。」という言葉も、岡本太郎さんに言われる方が楽しいですね。




