ニンゲンは撤退を終えることがあるのか?
アモス・ギタイ監督作品、フランス、イタリア、イスラエル
ジュリエット・ビノシュ様、ジャンヌ・モロー様、ダナ・イヴジー様他
2005年のガザ地区からのイスラエル入植者の撤退を背景とする作品。
映画はフランスのアビニョンから始まる。
父を亡くしたばかりのアナのもとに、父が養子に迎えたイスラエル人青年ウリが
葬儀に参列するためにやってくる。
久々に再会したアナとウリは遺産の相続手続きのために弁護士に会い、
そこで20年前にイスラエルで出産後すぐに手放した娘が成長してガザ地区で暮していること、
しかも父が自分には告げずに娘への支援を続けていたという事実を知らされる。
娘と会うことを決意したアナはウリとともにイスラエルに向かう……。
ジュリエット・ビノシュ演じるヒロインの娘探しの旅を媒介に、
混沌としたイスラエル=パレスチナの現状が見る者にたたきつけられる力作。
(Amazonより引用)
三か国の共同制作ですが、ロケも三か国で行われたそうです。
極端に違う環境だけに、リアルさが迫ります。
ジャンヌ・モロー様は、最晩年の作品の一本。
作中のお写真見つからず、撮影後の記念写真?
作品内容に全く予備知識なく、ジャケット写真しか拝見していなかったので、
冒頭のヒロインの父の死から、話があのように展開するとは思っても居なかった。
財産相続の問題から、話がどんと方向を変える。
(シンプルな洋服に翻るスカーフの色が美し過ぎる
日本版ポスターはこちらの作中のスカーフそのままのものを使用
海外情勢にうとい?からとも言えるかも。でも美しい。)
お写真の美しさが想像させるようなお話では全然ない。
イスラエル、パレスチナ問題、それを遡っていくといつまで続くのか。
人の持つ「自分が正しい」「正すために戦う」は、
ニンゲンが滅亡するまで続くのではないだろうか、
そんなことを考えながらラストシーンにたどり着きました。
ロシアのウクライナ侵攻が、今やまるで終わったかのように話題に上らなくなった。
イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃が起こっても、
ウクライナ侵攻が終わったわけではない。
本作中でも、ヒロインがどれだけ切迫した状況を解っているかわからない。
解決することは無いように思われるイスラエルとパレスチナの問題。
そして世界中で人は主義主張や宗教の正しさの為、国の為、欲の為に戦争を続ける。
作品最後、やっと再会した母娘はあっという間に引き離される。
この親子が再び会うことはあるのか?
ヒロインの父の想いも心に残る・・・
やるせない、厳しい一作でした。