愕 然
フローリアン・ガレンベルガー監督作品。(ドイツ・ルクセンブルク・フランス)110分
エマ・ワトソン様、ダニエル・ブリュール様、ミカエル・ニクヴィスト様、
マルティン・ヴトケ様、ジーン・ワーナー様、ヴィッキー・クリープス様他
チリのクーデター(1973)は、社会主義国での、合法的選挙の結果生まれた政権が、
軍事クーデターにより、覆されたもので、
映画でも「ミッシング」(1982)、「愛と精霊の家」(1993)、「死と乙女」(1995)等、
多くの作品で取り上げられています。
しかし、この映画で描かれている「コロニア・ディグニダ」というコロニーについては、
初めて知り、映画の内容云々以前に、事実のショックが大きすぎました。
南米とナチス戦犯との繋がりは、根深いものがある・・・とはいえ、
この映画のベースとなった実話は1973年のこと。
「コロニア・ディグニダ」を設立した、パウル・シェーファーが、
少年に対する性的暴行で起訴されるのが1997年、
潜伏後の逮捕が、2005年という事実。
第二次世界大戦の「戦後」が次第に遠くなっているのを感じていた昨今。
ナチスに関しても、「オデッサ・ファイル」の時代は過去となり、
新世代のネオナチの怖さを感じていたのでしたが、
そんな認識が、どれだけ生ぬるいか、突きつけられた思いです。
シェーファーは、ヒトラーユーゲント団員から、第二次世界大戦では軍曹。
戦後、教会・孤児院を設立するが、ここでも、少年に対する、
性的暴行で訴えられ、ドイツから脱出。
1961年、チリに「尊厳のコロニー」(コロニア・ディグニタ)を設立。「教皇」と名乗る。
農業コミュニティという名目は、完全な嘘ではなく、
広大な敷地内では、農業が営まれたが、有刺鉄線で囲まれたコロニーからは、
一度入ると、出ることは許されず、軍事政権下では、拷問施設として使われ、
人体実験も行われ、一時は、ヨーゼフ・メンゲレが匿われてもいた。
CIAは、それを知っていたというから、本当に政治は恐ろしい。
生活は、男、女、子供と分けられ、基本、接触は禁止。
性欲を抑える薬も飲まされている。
そもそも「会話」すら禁じられているし。
ここでも、「教皇」は、日常的に少年に対する性的暴行を繰り返している。
躾という名目での拷問もまた、日常的。
映画では、ルフトハンザ航空の客室乗務員レナが、
チリで、左翼活動にも関わっているジャーナリストの恋人ダニエルと、
クーデターに遭遇。住んでまで調査しているのに、軽率なダニエル・・・
彼女の制止も聞かずカメラのシャッターを、
切り続けたダニエルは、反体制分子として捕えられる。
だから、彼女が、やめなさい捕まるわって何度も言ったでしょ!
彼が「コロニア・ディグニダ」に収容されたのを知ったレナが、
信徒として、潜入し。いやはや、女は強い?
奇跡的に二人とも、脱出、大使館に逃げ込み保護される。
共に脱出を図った、妊娠中の女性は、仕掛けられた罠で死亡。
コロニーに入る為の「教皇」との面接では、
ブラジャーを着用していることを非難され、さらし巻き?へ。
衣類は伝統的、ドイツのパターンが用いられていて、
実際の写真を見ても、「現代」には見えないです。
国外に出る為の飛行機搭乗は、すぐには、空席がないと言われるが、
レナが、ルフトハンザ航空のパイロットと連絡を取ることに成功。
大使館自体が、「コロニア・ディグニタ」と通じている中、離陸直前に搭乗。
離陸許可が管制塔から取り消しされる無線を振り切り、
パイロットが離陸させてくれたことで、逃亡出来たというもの。
コロニア・ディグニタは、武器を所有していたと言われるが、
この映画の中では、製造も行われ、軍事政権から毒ガス製造の依頼の場面も。
シェーファーが起訴され、逮捕まで8年。
ナチス残党は、各種機関の要職についている者も多数、
組織は存続し、資金も潤沢、戦犯逃亡を幇助していたと「言われた事実」が、
今現在も続いている!?そして、ネオナチの登場。
解りやすい?近くの某国とは違い、世界規模で、黙認された秘密裏の存在。
ぞっとする「現実」です。