「Il y a longtemps que je t'aime)」(2008)それぞれの傷 | 時は止まる君は美しい

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巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

 

自らに課す「罪と罰」

 

フィリップ・クローデル監督作品。「ずっとあなたを愛してる」(フランス)118分

クリスティン・スコット・トーマス様、エルザ・ジルベルスタイン様、ジャン=クロード・アルノー様

セルジュ・アザナヴィシウス様、ロラン・グレヴィル様、フレデリック・ピエロ様他

・・・長いお名前の俳優さんが多い作品ですね・・・

 

 

6歳息子を殺した、元医者のジュリエットが、15年刑期を終えて出所して来る。

ナンシーに移り住んだレアが、空港に彼女を迎えに来る。

 
 

 

と、刻み込んだ。自らの殻の内に閉じこもり、心を開かない姉の表情。

 

 

「面会に行かなくてごめんなさい」

レアは、両親から、姉はいなかったものと思えと、ずつと言い聞かせられ、

姉の存在を、生活に現さない習慣を植え付けられていたから・・・

「(行政が)勝手に連絡したのよ、私を引き取る必要はないわ」

「知らせてくれたのは正解よ」

 

 

とはいうものの、レアの夫は、罪状が罪状だけに、受け入れがたく思っている。

二人の養女も「お話しない、変なおばさん」という第一印象。

ジュリエットが、裁判で、ほぼ黙秘を通した為、殺人の動機は不明のまま。

離婚したは、彼女に不利な証言をしただけ。

ということで、彼女が抱え込んでいる、その「動機」が、

ジュリエット自身の「罪と罰」の秘密であり、そこには深い理由があって、

彼女がそれを口にしない限り、心の扉は開かないことは、

すぐに解り、ずっと、映画の底辺に流れ続ける。

 

 

就職の面接に行き、刑務所に入った理由を聞き「出て行け!」と拒否する社長。

試験採用になった病院の事務。院長から呼び出しで、周囲との調和を心がけよという注意。

それでも、日々が過ぎるうち、妹夫婦の生活に溶け込んで、

レアのお姉さんとして受け入れられていく、ジュリエット。

 
 

 

 

妹と、定期的に訪れ、泳ぎながら話をするプールも印象的。

何だか、日本で言ったら、銭湯みたい???

 

 

 

子供達も、お休み前の「ご本読んで」を、パパより、おばさんを指名するように。

 

 

絶対拒否の始まりだったパパも、ジュリエットに子守を頼むように。

レアの同僚と、美術館で出会い、そこはかとなく想いを寄せられも。

 

 

ジュリエットが見ていた、悲劇の絵と同じ画家による、

彼の初恋の人に似ているという、美しい肖像画へと導かれるジュリエット。

「初恋は一蹴されたけど、彼女は拒否しないから、いつでも会えるんだ」

 

 

二週に一度、出頭しなくてはいけない、警察の担当者も、孤独感が伝わり合う。

彼は、別れた妻子は遠くにいて、なかなか会えない。

何時か行きたいと思う、源泉がどうしても見つからないというの話しを聞かせる。

 

 

或る日、出頭したら、思いがけず、新しい担当者が。

「遂に、川に旅立ったのね」というジュリエットに「旅立ったのは確かだが、自殺だ」という返事。

大学で教鞭をとるレアは、ラスコーリニコフ(「罪と罰」主人公)についての、学生の観念的解釈に、

文学を神聖化しないで!ドストエフスキーだって、罪を知り尽くしてるわけじゃないわ」

と、キレてしまう。姉は抱え込むを、決して口にしない。

 

 

痴呆となっている面会すると、ヒステリックに機嫌が悪い母が、

二人きりになるなり、急にジュリエットに抱きつき、「学校から帰ったの?」という一瞬

本当に一瞬で、我に返ったように、また不機嫌に怒鳴りだす母だけれど。

そして、或る日、ジュリエットが隠していた、息子の写真と、彼女に宛てた手紙

その裏に書かれたメモを偶然見つけるレア・・・過去の事実に繋がるメモ。

 
 

 

ジュリエットが選び、犯した罪は、あまりに大きいけれど、

誰しもが、心に、何らかの罪を背負っているのではないでしょうか。

 

 

その、秘められた哀しみを、癒していくものは何なのか。

 

 

警官が選んだも、その一つだけれど・・・

レアが付け続けていた日記数字も、その一つ・・・

丹念に綴られた、一瞬一瞬が大切な映画でした。