「Elle s'appelait Sarah(サラの鍵)」(2010)のやるせない中の希望 | 時は止まる君は美しい

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巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

 

生き延びた罪悪感、新しい生命

 

ジル・パケ=ブランネール監督作品。(フランス)111分

 

 

クリスティン・スコット・トーマス様ニエル・アレストリュプ様ミシェル・デュショソワ様

エイダン・クイン様メリュジーヌ・マヤンス様

 

 

 

1942年、パリ。フランス当局による、ユダヤ人検挙が行われ、

少女サラは、両親と共に連行される。子供部屋のをかけられる納戸を隠して。

 

 

 

きっとすぐに帰れる、それまで隠れていて、すぐに助けに戻れるからという少女の想い。

 

 

しかし、家族は、劣悪な環境の冬季競輪場ヴェルディヴに収容され、

その後、ボーヌ・ラ・ロランド通過収容所へ、そこで両親とも引き離されることになる。

 

 

 
 

 

ずっと握りしめたを手に、収容所で知り合った少女ラシェルと、脱走に成功し、

老夫妻に助けられるが、ラシェルはジフテリアで死亡。

 

 

デルフォール老夫妻の孫息子を装って、パリの子供部屋に向かう。

既に没収され、他の家族が住んでいるが、ようやく鍵が開けられた時、

そこには、の無残な姿が。

遺体はデルフォール夫妻が引き取るが、その住人は、サラへの援助金を送り続ける。

サラの話しと並行して描かれる、現代。

 

 

 

2009年ジャーナリストのジュリアは、結婚してアメリカからパリへ移っている。

働く編集部1942年フランス政府によるユダヤ人検挙特集することに。

 

 

夫の親から受け継いだに引っ越すジュリアは、偶然にもそこが、

検挙されたユダヤ人から没収された家だった事を知り、かつての住人について調べ始める。

 

 

そんな中、望んで、ずっと出来なかった第二子45歳にして恵まれる。

は「老いた父になりたくない」と、否定中絶の為、病院まで行くが、実行できない。

そこへ入って来る新情報。

 
 

 

 

成長して老夫妻の元を「赦して、愛しています」という書置きを残し、

姿を消したサラの足取りが、その後、ニューヨークへ向かったことを知り、

サラの結婚相手の家を訪れるジュリア。サラは40年前、重い鬱を患い、

自ら交通事故を起こして亡くなっていた。一人息子ウィリアムが結婚してフィレンツェに住むと知り、

会いに行くジュリア。サラは、彼に、過去どころか本名も告げていなかった。

ユダヤ人と解ったら殺される、と、生後すぐに洗礼も受けさせて育てた息子。

 

 

自分にユダヤ人の血が流れていることも知らなかった彼は動転してジュリアを追い返す。

人の人生に、勝手に踏み込む傲慢さに気付くジュリア。

サラの息子は、死期が近いの元を訪れ、が遺した日記を渡される。

そこにすべてが書いてあるという日記には、が挟まれ。

 

 

2年が流れ、ジュリアは離婚し、子供を出産。ニューヨークで二人の娘と暮らす中、

ウィリアムから、会いたいという連絡を受ける。

自分の傲慢さに気付いたことを詫びるサラ。知らなかった母の真実を知ることが出来た事、

父が穏やかに逝ったことを告げるウィリアムは、ジュリアの赤ちゃんの名前を尋ねる。

サラ」・・・

 

 

戦争傷跡が、生き延びた一人一人の生きた人たちに与えるものの中で、

生き残ったことへの罪悪感、というものがどれだけ辛いものか、想像するしかありません。

福永武彦著「死の島」でも、ヒロインは、自分の否定していた・・・

「死の島」のヒロインは広島原爆を生き延びた女性。

原爆投下の日が、今年もあと数日となりました。

最後に、映画の冒頭、子供部屋のベッドの中で弟と遊ぶサラ無邪気な姿を。

 

 

何事もなければ、これは、日常の何でもない光景。