「愚か」がリアル
以前、イザベル・ユペール様 ↑ が演じられた「Madame Bovary」、新作?を拝見しました。
ギュスターヴ・フローベール原作、ソフィー・バーセス監督の2014年作品。
今回は、先般の「クリムゾンピーク」に続き、ミア・ワシコウスカ様が夫人役。
修道院でお嬢様教育を受けつつ、「結婚」に夢を抱く少女が、
修道院→直行、花嫁に。田舎の優しく真面目なお医者様の妻に。
(あ、お医者さんの奥さんってところも、クレーヴの奥方と同じだわ)
素直に、夫の愛にくるまれていたものの、
若きイケメン君(残酷な弓を射ってた少年、エズラ・ミラー君だよこれが)に熱愛されちゃう。
落ちますよねえ。
続いて、由緒ある家柄のダンディに愛を乞われ・・・
単調な、面白みのない田舎の生活に飽き足らず、ずぶずぶと不倫の渦へ。
ダンディの館で催される狩猟に参加する為に、憧れのドレス新調したんですよね。
ドレスを新調したのが皮切りになり、素朴だった娘が、どんどんお洒落になり、
家の調度も金の燭台、美しい織物のカーテン・・・洗練地獄が待ってます。
夫人の新生活=借金地獄。いい顔してた商人からの残酷な催促が始ります。
「ノッティングヒルの恋人」の底抜け陽気だったリス・エバンス様だ、これが。
借金地獄に嵌るきっかけとなる、お洒落への目覚め、夫人のセンスよかった。
それだけに、止められない止まらない。
男たちの「愛」は「夫ある身の夫人」相手っちゅう、責任負わなくていい愛。
だ~れも、いざとなると、力もお金も貸してはくれない。
孤独と絶望の中、夫人は夫の薬棚から薬瓶を手に取り・・・という、有名なお話。
これ、小説を読んだのが20代の頃。映画で言えば長回しのような描写とかお勉強。
イザベル・ユペール様の大人の美しさを、「うんうん」と拝見するように、
「夫人」という言葉が、大人の立場に見えてました。
今考えれば、その頃の年頃が、ボヴァリー夫人と同世代だったんですね。
今回、若きミア・ワシコウスカ様で拝見して、新鮮さを感じると共に、
愚かさ、世間の表裏、そういったものに陥っていく姿がある種自然に感じました。
そりゃ、ため込んだ不満が、うっかりコロコロ不倫地獄っていう大人の物語もありだけど、
「あ?え?そうだわ、私、こうなる筈じゃなかったのに、いけないわ、でも・・・」
人間の欲・見栄・薄情・絶望、そういったものが、とても素直に描かれた一作でした。
小説を読み直したくなったなあ。
・・・なんて言いつつ、録画コレクションに、1991年クロード・シャブロル監督版発見。
続けて拝見。いやあ、こっちも美術、大人の世界などがリアルだあ。
そして、個人的には結構好きな、「ボヴァリー夫」の哀しい魅力?が。
夫人のことが好きで好きで大切なんですよね。
プロポーズの結果が承諾なら、居間の窓が開け放たれる、それを待つ「ボヴァリー夫」
舞踏会で医者が踊るものじゃないと夫人に言われ、
シャンパンを持って夫人が踊り終わるのを待つ「ボヴァリー夫」
名優ジャン・フランソワ・バルメール様が演じられて、夫人との対象が鮮明。
しかし、現実、そういう実直で地味な魅力より、派手で不実な相手に惹かれるものですね。
イザベル・ユペール様にされたら、もう、怖いの域に達する、
身も蓋もない、「つまんな~い生活」顔に飛び込む、求愛攻め。
かくて悲劇は起こる也。