第二百九十六夜・マール・オベロン様 | 時は止まる君は美しい

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巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

何故かタスマニア


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先般、友人から、淀川長治先生の著書を頂きました。

「私をときめかした女優たち」という副題で、

37名の女優さんについて語られた御本。

どうやら、その中の1名だけは、御本人ではなく、

リクエストによって書かれたお方だそうで、

それがどなたなのかも興味深い1冊です。  


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何と言っても、淀川先生が思い入れのある37名(36名?)。

その幅の広いこと、エピソードの豊富なこと。

淀川先生ですので、実際にお会いしてのお話しも多く、

マール・オベロン様も、その描写に惹きつけられ、

ほほえましく拝読させて頂きました。


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Merle Oberon(マール・オベロン)様、御結婚歴4回。

1911年2月19日~1979年11月23日、享年68歳。

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お父様がインド駐在のイギリス軍人で、お母様がインド人。

正式なご結婚ではないという事なので「蝶々さん」状態でらしたのか?

オベロン様、出自をひた隠し、「オーストラリアのタスマニア」生まれと、

偽られ、サリーを着用するお母様については、

「使用人」で通されていたそうです。

淀川先生が、オベロン様にお会いになった時は、

まだその定説が通っていて「貴方はタスマニアの珊瑚」とおっしゃると、

「マアーッ」と目を輝かして笑われたとか。

しかし、何故にわざわざタスマニア?凝った偽装だ・・・

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お会いしたら美しくてらしたから、件の珊瑚のたとえをおっしゃられた

・・・とはいうものの、先生、なかなか辛口。

オベロン様の回の、のっけから飛ばされてます。

「ほんとまあ凄いスタアの相手役に早くも選ばれたのである」

(プロデューサーが夢中になったから)

そして、結婚遍歴を教えて下さった後、

「オベロンを私は巧いと思ったことはないが、

非常に印象をきざみこます女優だった」 


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先生の名調子にのせられて、お写真を探したら、

とってもお美しい。しかし、私、1作しか拝見したことがない。

1939年、ウィリアム・ワイラー監督作品

Wuthering Heights(嵐が丘)」キャサリン役。

他にも「ドン・ファン」「紅はこべ」(共に1934年)等、  

有名な作品もあるし、「嵐が丘」はリバイバルで、

劇場のスクリーンで拝見した位なのに。


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ヒースクリフ役に、ローレンス・オリヴィエ様。

ポスター、凄い。まるでヒースクリフの方が幽霊のよう。

ってくらいで、キャサリンを失って、気難しくなったというあたりは、

らしい感じですが、ヒースクリフの野趣がない配役?

そっちに気が行って、オベロン様の記憶が希薄になったのか?

今回、淀川先生のお力で、思い出させて頂くまで、

お顔、忘れちゃってました。

特に冒頭のお写真、とても好きで、淀川先生有難うございますです。

と、大切な御本をくれた、友人、有難う。


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淀川先生が、オベロン様と、ジャネット・ゲイナー様を、

それぞれの旦那様と若い愛人と共に、

ロサンゼルスの「カワフク」というスキヤキ屋さんの日本間に、

御招待された時のお話しが楽しいので、

そちらを拝読しつつ、「嵐が丘」のお写真を。

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「彼女が『ドン・ファン』でカスタネットを鳴らして階段から

ダンス・ポーズで下りて来たシーンを話し、

ダンスはお上手ですかと聞いたら、

カスタネットを手にしたのはあの時が初めてと笑い転げた。

彼女たちは日本酒をとっくり一本くらいはケロリとひとりで飲んだ。

あのゲイナーまでが。そして御主人のギルバート・エィドリアンは

゜暑い、暑い゜と巨体をもてあまし

(そのころ、ここは冷房がまだなかった)」

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キャシー、エドガァ・リントンとゴールイン。

リントン役にデヴィッド・ニーヴン様。

私はニーヴン様の方が断然いい、って関係ないか。

それにしても、女はしたたかなもの。

「嵐が丘」にしても、「グレート・ギャッツビー」にしても、

若気の至りだった相手が帰って来ない方が、助かったのに?

こういう女性に執り付かれてしまった男性は困る。

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「オベロンの方はその若き美青年と、

さも楽しげにスキヤキをたべながら、

このあと出てきたデザートのアイスクリームを

ひとさじずつすくってその若き男性の口に持ってゆくと

その男性がアーンと口を開けていた」


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「ゲイナーもそれを楽しげに眺め、私はあきれて笑ったが、

オベロンはコケットというよりも、まるで少女のようだった。

このとき彼女は四十一のはずだった。

しかし目のまえに見たマール・オベロンは

やっぱり美人でありましたなァ」


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はい、ローレンス・オリヴィエ様、御熱演を無視して、

楽しい淀川先生のお話ししてて、申し訳ございません。

ここらへんで、「ガラスの仮面」北島マヤ様も熱演されていらした、

「嵐が丘」の一節も、引用を。(田中西二郎様訳・新潮社版)


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「いまじゃヒースクリフと結婚するのは、あたしの落ちぶれることだもの。

だから、どんなにあたしがあの子を愛していても、

それをあの子に知らせてはならないの。

ヒースクリフがきれいだからでなく、ヒースクリフこそは、

ねえネリィ、あたし以上にほんとうのあたしなのだから

愛しているのだってこともね。

魂ってものがなんでできてるものか知らないけど、

あの子とあたしは同じ魂を持っているんだわ」


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エミリー・ブロンテ様の「嵐が丘」、見せ場のシーンでございますね。

ローレンス・オリヴィエ様、申し訳ございませんねえ。キャシー尽くしで。

冒頭の、キャシーの幽霊が現れたと聞いた後に、

ヒースクリフが幽霊を呼ぶ場面も有名なんで、

ここで、ヒースクリフを少し。

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「『おはいり!おはいりよ!』とむせび泣きながら、

『キャシィ、はいってきておくれ、おお、本当に_もう一度!

おお、いとしいおれの心の恋人!

今度こそおれの言うことを聞いておくれ、ああキャサリン、

とうとう今度こそ!』ところが幽霊は、幽霊の常として気まぐれだった。

まるで出そうなけはいすら見せないのだ。

ただ雪と風とが激しく舞い込むばかり、

僕のいたところまで吹き込んで、明りを消してしまった」

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って、写真は1992年、ピーター・コズミンスキー監督作品「嵐が丘」。

ヒースクリフ役、レイフ・ファインズ様。

ローレンス・オリヴィエ様、他意はございませんのよ。(本当か?)

英国の荒野の田舎のお金持ちという原作には、

ジュリエット・ビノシュ様、オベロン様よりリアルかも。

音楽は坂本龍一様でしたね。しかし、映画の印象、薄い・・・

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日本では、昼ドラにもなり、1988年、吉田喜重監督作品にも。
松田優作様、田中裕子様、石田えり様ご出演。

めっちゃ台詞が聞きとりにくかったけど、ヒースクリフ役に、

松田優作様の配役、ワイラー監督作品よりはリアルかな。 

 
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裕子様もオベロン様も、そうやすやすと、

お亡くなりになりそうには見えませんが。


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オベロン様とオリヴィエ様、気が合わないこと甚だしく、

どちらも、周囲にこぼしまくり、もめ続けだったそうで。

当時、オリヴィエ様と不倫中のヴィヴィアン・リー様が、

「風と共に去りぬ」のスカーレット役に、

一時、オベロン様とご交際があった、レスリー・ハワード様が、

アシュレー役に、というスライドは面白いです。  


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出自をひた隠されたというのは、やはり、世間の差別意識の為でしょう。

親を「使用人」と偽らざるを得ないとは。

当時程ではないかもしれないけれど、

今も、ヒトは差別意識が多いイキモノかもしれない気がします。  

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それでも、生命力も素晴らしい。

お若い時の美しさも、今回驚きましたが、

こちらの、すこしお年を召しての一枚。好きです。  


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本日のおまけ:たいていの作品に、必ず該当写真がある、

宝塚のお写真でございます。



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