「運命の逆転」
Jeremy Irons(ジェレミー・アイアンズ)様、1948年9月19日~。
学業からして演劇。順風満帆の役者人生。上手いです。
関係ないけど、お住まいは「城」。
「妻に似合うと思って」、即決でお求めになられたそうで。
ジュリエット・ビノシュ様が「監督よりうるさい!」
って言うくらい、演出?もされちゃうみたい。
そんなご仁だからこそ、演じられた役?
実在の人物、クラウス・フォン・ビューロー。
こんな長ったらしいお名前が覚えられちゃうほど、
強烈な映画でした。
1990年、バーベット・シュローダー監督作品「運命の逆転」
華やかな上流階級での、限りなくグレーゾーンな事件、
弁護士が書いた原作、アイアンズ様への対抗馬は、
グレン・クローズ御大。まずこれだけで、「保証付き」?
1980年代のアメリカで起きた事件。「フォン・ビューロー事件」。
通常摂取量の10倍のインスリン注射が原因で、
植物状態に陥った、大富豪である妻、
サニーへの殺人未遂で、義理の息子・娘・メイドに訴えられ、
第一審で懲役30年の有罪判決を受け、世間から注目されていた、
クラウス・フォン・ビューローが、人権弁護の世界的権威者、
ハーバードで教鞭をとる、アラン・ダーショウィッツに、
弁護を依頼します。
映画は、植物状態に陥ったサニーの独白で始まります。
「何が起こったのか、私も教えて欲しい」
逆玉婚夫婦(と言っても、フォン・ビューローってくらいで、
クラウスも貴族。)、既に関係は、相当な隙間風。旦那は愛人、
妻は、情緒不安定に、薬。
今回調べたら、サニーに薬の打ち方を習ったと、
作家、トゥルーマン・カポーティが証言しているようです。
当初、ダーショウィッツ弁護士は、クラウスへの不信と、
上流社会への反感から、引き受ける気持ちになれなかったのが、
事件の概要に興味がわき、別件の人権関係事件の、
裁判費用の調達の為、弁護を引き受けます。
調査を手伝う、生徒たちのチームの中に於いても、
クラウスへの反感・不審で、関わることに否定的なメンバーが。
アメリカって、学生の時から、シビアに働きますね。
そして、次第に、さまざまな問題が明るみになって行く・・・
その中でも、証人として名乗り出た人物が、
弁護側に不利な証拠をねつ造しようとして雇われていたり、
ドラマさながら。
そんな、裁判の流れと同時に、サニーが倒れるまでが、
再現され、語られる。
仕事なんてしなくていい夫、クラウスが「仕事がしたい」というのが、
富豪妻との夫婦の溝を深めます。言い争いの後、
耳線・アイマスクして寝るクラウス。
出会いの頃はこんなにロマンチックだったのに。
パーティー会場に連れ込まれた虎ちゃんに懐かれるサリー。
グレン・クローズ様に、運動会の飾りに使う紙の花みたいな、
どでかいピンクのお花のドレスを用意した、衣装デザイナーに感服!
夫から告げられる、プライド高き妻のショック。
アイアンズ様は、役作りの為に、相当研究を重ねられたそうですが、
実際のクラウスに似ているという以上に、
いや、もう、この「目」。これがすごい!
「白」なのか「黒」なのか、見れば見る程に解らなくなる曖昧な目。
芝居の為なら、でかパンも履きます。グレン・クローズ様、素敵!
この作品と「危険な関係」「愛と精霊の家」あたりで、
当分、クローズ様がマイブームだった時期あり。
だいたい、「被害者」サリーに関しても、
被害者にも見えるし、事故を起こしそうにも見える。
それからも、サニーの生活は変わらず、
前夫の子供二人は、義父を信じず、監視していたとか。
そんな中、遂に、サニーが二度と意識を取り戻すことが無くなる、
コーマに陥る事件が。
クラウスの鞄からインスリンと注射器が発見され、
裁判が繰り広げられることに。
裁判が進むにつれ、一審で最も有力とされた、
証拠や証言が覆され、クラウス・フォン・ビューロー無罪。
クラウス・フォン・ビューロー氏はロンドン在住。
美術批評や演劇評論をされています。
裁判終了後のクラウスへのダーショウィッツ弁護士の言葉。
その時の、ジェレミー・アイアンズ様の表情。
そして、ラストシーン。
事件そのものが、無罪確定とはいえ、
限りなくグレーゾーンだった事が、伝わって来る、
ものすごいお芝居を見せて頂きました。
もう一本。1993年、デイヴィッド・クローネンバーグ監督作品。
「Mバタフライ」
これも、実話が元になった作品。
ジョン・ローン様が、女性に扮したスパイとなり、
外交官のジェレミー・アイアンズ様を骨抜きにします。
確かに「女です」と通すにはごつ過ぎ?ジョン・ローン様?
そりゃあ、こんなシーンがあるんで、気持ちも解るんだけど、
映画館で、隣に座ったカップルの男の子が、
笑う笑う。気恥ずかしかったんだと思うけどね。
激しく迷惑だったよ、君。これ、かなり深刻な映画。
あのカップル、今頃、どうなってるかなあ。
護送車の中でのジョン・ローン様。
「貴方が愛したのは、私だよ」と、
全裸になられます。それを激しく拒否するアイアンズ様。
ラストシーンは刑務所でのアイアンズ様の一人芝居。
自らが女装し、「私が愛したのは東洋の幻だった」
と、自害する、「愛」とは何かが「アデルの恋の物語」
に通じるものを感じさせる名作・・・だろ思う?
クラウス・フォン・ビューロー役で男優賞ゲット。
アイアンズ様は、別件でまた、お会いする予定。
またね~、アイアンズ様。