第五十七夜・ジェレミー・アイアンズ様 | 時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

「運命の逆転」


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Jeremy Irons(ジェレミー・アイアンズ)様、1948年9月19日~。

学業からして演劇。順風満帆の役者人生。上手いです。

関係ないけど、お住まいは「城」。

「妻に似合うと思って」、即決でお求めになられたそうで。


ジュリエット・ビノシュ様が「監督よりうるさい!」

って言うくらい、演出?もされちゃうみたい。

そんなご仁だからこそ、演じられた役?

実在の人物、クラウス・フォン・ビューロー。

こんな長ったらしいお名前が覚えられちゃうほど、

強烈な映画でした。


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1990年、バーベット・シュローダー監督作品「運命の逆転」

華やかな上流階級での、限りなくグレーゾーンな事件、

弁護士が書いた原作、アイアンズ様への対抗馬は、

グレン・クローズ御大。まずこれだけで、「保証付き」?


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1980年代のアメリカで起きた事件。「フォン・ビューロー事件」。

通常摂取量の10倍のインスリン注射が原因で、

植物状態に陥った、大富豪である妻、

サニーへの殺人未遂で、義理の息子・娘・メイドに訴えられ、

第一審で懲役30年の有罪判決を受け、世間から注目されていた、

クラウス・フォン・ビューローが、人権弁護の世界的権威者、

ハーバードで教鞭をとる、アラン・ダーショウィッツに、

弁護を依頼します。  


映画は、植物状態に陥ったサニーの独白で始まります。

「何が起こったのか、私も教えて欲しい」


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逆玉婚夫婦(と言っても、フォン・ビューローってくらいで、

クラウスも貴族。)、既に関係は、相当な隙間風。旦那は愛人、

妻は、情緒不安定に、薬。

今回調べたら、サニーに薬の打ち方を習ったと、

作家、トゥルーマン・カポーティが証言しているようです。


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当初、ダーショウィッツ弁護士は、クラウスへの不信と、

上流社会への反感から、引き受ける気持ちになれなかったのが、

事件の概要に興味がわき、別件の人権関係事件の、

裁判費用の調達の為、弁護を引き受けます。


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調査を手伝う、生徒たちのチームの中に於いても、

クラウスへの反感・不審で、関わることに否定的なメンバーが。

アメリカって、学生の時から、シビアに働きますね。

そして、次第に、さまざまな問題が明るみになって行く・・・ 



その中でも、証人として名乗り出た人物が、

弁護側に不利な証拠をねつ造しようとして雇われていたり、

ドラマさながら。

そんな、裁判の流れと同時に、サニーが倒れるまでが、

再現され、語られる。


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仕事なんてしなくていい夫、クラウスが「仕事がしたい」というのが、

富豪妻との夫婦の溝を深めます。言い争いの後、

耳線・アイマスクして寝るクラウス。


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出会いの頃はこんなにロマンチックだったのに。

パーティー会場に連れ込まれた虎ちゃんに懐かれるサリー。

グレン・クローズ様に、運動会の飾りに使う紙の花みたいな、 

どでかいピンクのお花のドレスを用意した、衣装デザイナーに感服!




遊びではない、本気の愛人が出来たと、

夫から告げられる、プライド高き妻のショック。


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アイアンズ様は、役作りの為に、相当研究を重ねられたそうですが、

実際のクラウスに似ているという以上に、

いや、もう、この「目」。これがすごい!

「白」なのか「黒」なのか、見れば見る程に解らなくなる曖昧な目。

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芝居の為なら、でかパンも履きます。グレン・クローズ様、素敵!
この作品と「危険な関係」「愛と精霊の家」あたりで、

当分、クローズ様がマイブームだった時期あり。


 


だいたい、「被害者」サリーに関しても、

被害者にも見えるし、事故を起こしそうにも見える。

実際に、同じような事件が、直前にも起きている。 

 


 


それからも、サニーの生活は変わらず、

前夫の子供二人は、義父を信じず、監視していたとか。


 


 


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そんな中、遂に、サニーが二度と意識を取り戻すことが無くなる、

コーマに陥る事件が。


 


クラウスの鞄からインスリンと注射器が発見され、

裁判が繰り広げられることに。


 


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裁判が進むにつれ、一審で最も有力とされた、

証拠や証言が覆され、クラウス・フォン・ビューロー無罪。


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夫人は、事件後28年、昏睡状態のまま、2008年に死亡。

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クラウス・フォン・ビューロー氏はロンドン在住。

美術批評や演劇評論をされています。


 


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裁判終了後のクラウスへのダーショウィッツ弁護士の言葉。

その時の、ジェレミー・アイアンズ様の表情。

そして、ラストシーン。

事件そのものが、無罪確定とはいえ、

限りなくグレーゾーンだった事が、伝わって来る、

ものすごいお芝居を見せて頂きました。


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もう一本。1993年、デイヴィッド・クローネンバーグ監督作品。

「Mバタフライ」

これも、実話が元になった作品。

ジョン・ローン様が、女性に扮したスパイとなり、

外交官のジェレミー・アイアンズ様を骨抜きにします。


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確かに「女です」と通すにはごつ過ぎ?ジョン・ローン様?


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そりゃあ、こんなシーンがあるんで、気持ちも解るんだけど、

映画館で、隣に座ったカップルの男の子が、

笑う笑う。気恥ずかしかったんだと思うけどね。

激しく迷惑だったよ、君。これ、かなり深刻な映画。

あのカップル、今頃、どうなってるかなあ。


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護送車の中でのジョン・ローン様。

「貴方が愛したのは、私だよ」と、

全裸になられます。それを激しく拒否するアイアンズ様。

ラストシーンは刑務所でのアイアンズ様の一人芝居。

自らが女装し、「私が愛したのは東洋の幻だった」

と、自害する、「愛」とは何かが「アデルの恋の物語」

に通じるものを感じさせる名作・・・だろ思う?   


 


クラウス・フォン・ビューロー役で男優賞ゲット。

アイアンズ様は、別件でまた、お会いする予定。

またね~、アイアンズ様。