会場は140席の小さなホール。ステージのピアノはスタインウェイ。PAシステムは設置されていない。地下にあるため天井は低い。客席の天井レールからぶら下がる照明器具は武骨だが、ステージ両脇には逆円錐形の太い柱がホールの天井を支え、扇形をした客席側の側壁には天井から逆円錐形の柱が下方へと突き出していたりとユニークだが美しい音響設計だと感じた。
開演前にホールをぐるりと見渡して、ほぼ満員であることを確認する。
1曲目が可愛らしく素朴ともいえるテーマのワルツ(6/8だったかも?)で始まって「ツカミがこれねー」と意表を突かれる。次の曲では、跳躍する奇妙な音使いのテーマとなり、テンションがさらに高くなる。しかし、続くどの演奏においても、主体はハードでアブストラクトな即興である。「そうそう、こんなジャズが聴きたかった!」と嬉しくなる。
Adam Pieronczykの演奏は、難易度の高いパッセージを高速で次々と繰り出す饒舌かつ流麗なスタイル。楽器が体の一部であるかのように、めくるめくといった感じで即興を紡いでゆくので、ちょっと圧倒されてしまう。
ピアノの関屋は、そんなソプラノに軽やかに寄り添いつつ、時に鋭く反応しながら対等に渡り合っている。また、Pieronczykとの即興を心から楽しみ、一度きりの音楽を創造する喜びを感じながら演奏しているように思えて好感が持てる。
Pieronczykと関屋のデュオは、今回が初顔合わせ(ですよね?確か)とは思えないほど抜群に良い相性だと感じた。ソプラノサックスとピアノの生音は、このホールにおいてバランス良く美しく響いていたと思う。
最後の曲が終わり、アンコールに応えて出てきた関屋が、撮影OKだと告げる。
一眼レフを持って来なかったことを後悔したが、二人の演奏に集中する私。シャッター音が邪魔と思いながら...。
終わってみれば1時間があっという間だった。なんと濃密で贅沢なひとときだったことか。今夜ここへ来ることができて本当に良かった。素晴らしいコンサートを堪能したという満足感でいっぱいになり、大きな拍手を送った。
Adam Pieronczykも関屋友加里も全く知らなかったが、オラシオさんのnoteを読んで、これ行っとかなきっと後悔する!と思ったのですぐに席の予約を入れたのだった。オラシオさん、ありがとう!!
オラシオさんのnoteはこちら。
現代ポーランドジャズを牽引してきたアダム・ピエロンチク Adam Pierończykが再来日!|オラシオ (note.com)
終演後のサイン会には長い列ができていた。
会場で購入したDVD(PAL方式)とCD。
Adam Pieronczyk meets Yukari Sekiya
Adam Pieronczyk (ss)
関屋 友加里 (p)
日 時 2024年5月21日(金曜日) 午後7時30分 開演
会 場 ドルチェ・アートホール Osaka
※どうでもいいオマケ
夫が仕事を休めなかったので一人で出かけた。田舎住まいなので、都会の夜のコンサートへはマイカーでないと日帰りが難しい。阪神高速梅田ICを出て大阪駅前第1ビル地下駐車場へと滑り込む。
地下街のディアモール大阪を北へ向かい、阪神うめだ本店を通り抜けて2階デッキへると、大好きな梅田吸気塔(設計:村野藤吾)が見える。私は、梅田吸気塔が好きすぎて、ここに住めたらどんなにいいだろうかといつも思ってしまう。
阪神うめだ本店へ戻って店内を少しひやかし、もと来た地下街へ戻る。会場はHep Fiveのすぐ先やから楽勝や!と、地下街をブラブラ歩いてたら、なんとWhityうめだの途中で迷ってしまった。地元民も迷う(?)という梅田の地下街を甘くみたらアカンのだ。ま、それでも開場時間の少し前には到着した。
終演後は、迷わず駐車場へとたどり着いたが、中国自動車道の池田あたりから夜間工事で一車線になりスピードが出せない。「この工事、去年からやってるけど、いつ終わるんやろ?」と、思いながらようやく工事区間を通り抜け、ただひたすら我が家を目指して走る。帰宅したのは11時半。夫はすでに寝ており、猫のはっちゃんも寝たらしく出迎えに来てくれなかった。ま、いいけど...。
コロナ禍ですっかり重くなっていたフットワークだが、これからはどんどん好きなところへ行けると思うと嬉しい。その大きな第一歩がこのコンサートだった。