エリック・サティを弾く | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

今年になってふと思いついた。エリック・サティを弾いてみようと。なんでもっと早く思いつかなかったのか。


趣味の写真で大阪へ都市夜景とか雑居ビルの螺旋階段とかを撮影しに行った日、梅田のササヤ書店へ寄った。手始めにグノシエンヌ(第1番から第6番まである)という曲を弾きたかったので、輸入物などいろいろある中から楽譜を一冊だけ選んで買った。読譜の苦手な私が選ぶ楽譜の条件は、とにかくオタマジャクシが見易いこと。これに尽きる(笑)

楽譜を見て初めて知ったが、サティ作品には理解に苦しむ指示があったり小節線の無い曲が多かったり。でも、細かいことは気にしなくていいと思う。
音数が少なくて繰り返しが多くゆったりとしたテンポ。中級の入り口付近を入ったり出たりウロウロしている私にはこれくらいがちょうどよい。
独特の美しさを持つ音の連なりと和声感がとても現代的だし、ミステリアスでちょっぴりダークな雰囲気が私の好みにぴったり。とりあえずグノシエンヌ第1番には花丸をもらえた。
ちなみに、買ったのは全音の楽譜だが、グノシエンヌ第1番のP48の2段目と3段目に明らかな印刷ミスがある。ピアノを再開してからまだ8年しか経ってないけど、楽譜の印刷ミスってけっこうあるような気がする。


1曲弾けたのに気をよくして楽譜をパラパラ見てたら、ヴェクサシオンという曲が...。これは、いったい、なんじゃらほい?(としか言いようがない)
同一モチーフ840回繰り返しって、サバイバルかっ!しかも臨時記号だらけの変な音の連続。
楽譜に添えられた作曲者のノートには、こう書かれている。

 

このモチーフを連続して840回くり返し演奏するためには、あらかじめ、心の準備を整えることが大切であろう。深い沈黙と、真剣な不動性の姿勢によって。

 

いやはや、まったく、サティさんて人は、おちゃめなんだか真剣なんだか。これ弾くなら、心の準備どころか死ぬ覚悟がいるかもしれませんぜ。


と、ここまで書いてふと思った。
そういえばジョン・ケージの4分33秒というふざけた作品があったな。ケージが、サティのヴェクサシオンに対する返答の意味で、4分33秒を書いたのではないかと想像してみると面白い。ヴェクサシオンという究極のサバイバル作品に対し、4分33秒という究極の省エネ作品で返したケージさん。もちろんサティへの敬意をこめて。
なわけないか...。

 

 

*本日のオマケ(プラハ音楽院卒業演奏会のアンコール)

 

■ YouTube / 'Tom & Jerry Encore' live at Prague Conservatory

 

https://www.youtube.com/watch?v=19piJKYvBFU&feature=youtu.be