『ON JAZZ』 | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

本書は、1986年にフランスの国営ジャズオーケストラとして創設されたORCHESTRE NATIONAL DE JAZZ(以下ONJ)の創設20周年を記念して出版されたもので、FRANCOIS JEANNEAUが音楽監督となった第1期ONJからFRANCK TORTILLERが音楽監督となった第9期ONJまでの歩みを写真と文章でたどる内容となっています。


写真は全てモノクロームで、GUY LE QUERREC(注)によって撮影されたもの。LE QUERRECについては、LABEL BLEUよりリリースされたALDO ROMANO、LOUIS SCLAVIS、HENRI TEXIERとのコラボ「CARNE DE ROUTES」、「SUITE AFRICAINE」、「AFRICAN FLASHBACK」でご存知のかたも多いと思います。
本書では本番中の風景は意外に少ないですが、緊張感漂うリハーサル風景、舞台袖や楽屋の風景、はいチーズ!的な集合写真のほかに、移動中の車中やオフの時間に撮影されたものもあって、リラックスした表情、屈託のない笑顔、何気ない仕草といったミュージシャンの素顔を捕らえたひとコマひとコマが興味深く面白いと思いました。
また、楽屋の鏡に写るミュージシャンとその周りの風景、舞台照明によってステージ後方に映し出された人影とステージ上のミュージシャンといった、虚像と実像を巧みに組み合わせる独自の手法。あるいは、前景をピンボケになるほどぐっと手前に持ってくることによって、ダイナミックな奥行きと臨場感を表現する手法などは特に印象に残りました。
素晴らしいと思ったのは、それぞれのミュージシャンの表情がとても素直で自然なこと。GUY LE QUERRECは多くのジャズミュージシャンと交流があり、長期間にわたって彼等とともに行動し仕事を続けてきた写真家なので、信頼され、仲間として受け入れられているのでしょう。あるいは、ミュージシャンにとっては、彼が傍にいて撮影しているのがあたりまえで、いわば空気のような存在なのかもしれませんね。

ONJは1991年に来日し、東京で行われたライヴ・アンダー・ザ・スカイに出演しているんですね。そのときのライヴの模様や、地下鉄の日比谷駅入り口前での集合写真、地下鉄の車内でのひとコマなどもあって興味深いです。
見ていて可笑しかったのが、1986年にシャンゼリゼ劇場の舞台袖(?)で撮影された第1期ONJの集合写真。客演と思われるLARRY SCHNEIDER、JEAN-FRANCOIS JENNY-CLARK、MICHEL PORTAL、JOACHIM KUHNが椅子に座っていてONJのメンバーが後ろに立ったりしゃがんだりしているのは分かるのですが、不可解なのが、一番端っこでヤンキー座りしているご老体のGIL EVANSさん(笑)大先輩にヤンキー座りさせていいのかっ!と思わずツッコミたくなります。それにしても、本書でGIL EVANSのいろんなショットを見るにつけ、独特の困っているような表情といい、どこか可愛らしい雰囲気といい、なんともいえんエエ味出してはるんですよねー。GIL EVANSのような美味しいキャラクターは、写真家にとって絶好の被写体だったに違いありませんよ(笑)

巻末には、それぞれの音楽監督ごとに「活動時期」、ライヴの日時と会場名等を記した「出演暦」、ミュージシャンと担当楽器を記した「メンバー構成」、アルバム名とレーベルを記した「ディスコグラフィー」が掲載されており、付録として第1期から第9期までのONJの演奏をそれぞれ1曲ずつ収録したCDが付いていますので、簡単な資料としても役に立ちそうです。

御用とお急ぎでないかたはONJのホームページへどうぞ。
http://www.onj.org/fr/

(注)パリ在住のフランス人写真家(1941~)。1976年よりMAGNUM PHOTOS(アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロバート・キャパらが設立した“世界最高の写真家集団”)のメンバー。
GUY LE QUERRECについて詳しくはコチラで。
http://www.magnumphotos.co.jp/ws_photographer/glq/index.html

コチラでは、GUY LE QUERRECの作品をスライドショウでご覧いただけます。
http://www.magnumphotos.com/Archive/C.aspx?VP=XSpecific_MAG.PhotographerDetail_VPage&l1=0&pid=2K7O3R13FBOY&nm=Guy%20Le%20Querrec